愛されたい
お母さんは大抵文句を言ってた。誰も何もしない
片付けなさい!
酒ばかり台所で会話もなく飲むお父さんのことを一緒にいてもつまらないと不満を子供達に話す。それが日常だった
寝る前に姉弟3人並んで布団をしいて寝ていた。自分が読んでもらいたい本をそれぞれ選びお母さんが読む。お姉ちゃんが先。次はお兄ちゃん。一番小さい私は待っている間に寝てしまう
私が一番小さいのになぜ最後だったんだろうと記憶に残っている。別の日には読んでもらっていたのかもしれないが小さな寂しさが心に残っている。
仕事終えて帰ってくるお母さんに褒めて欲しい。私は掃除が嫌いだ。叱られてもやらない。だけど急にやろうと思い立った。玄関掃除して部屋片付けて
帰ってきた母の後ろをついて回った
お母さん!掃除したんだよ!偉いでしょ!?
見て!玄関でしょ。それからソファーの上とか!
お母さんは何も言わず頬にキスをした。
今思えば褒められたかったのではない
愛されたかったのだ
誰か買い物に行ってきてくれない?そうお母さんが言えば「行ってくる!」大人用の大きな自転車を頑張ってこいで買い物に行った。
お母さんに褒めて欲しい!
片付けができない私はいつも叱られていた。言われてもやらない。
お姉ちゃんはちゃんとしているのに何でできないの!
褒めてもらえない。ダメなところしか指摘されない。
でも1つ覚えている。
庭に置いてあるお父さんの仕事で使うパイプを持ってきてノコギリで一生懸命切っていた。
手に豆が出来て痛かったけど諦めなかった
竹馬を作ろうとしていた。ガムテープで巻いてやっと完成した。
できた!!
見てみて!
一人で竹馬作ったんだよ!
お母さんは言った
もし途中で諦めるなら怒ろうと思ってた
やり始めた事を放り出さず最後までやり遂げたと褒めてもらえたと思って嬉しかった
ねだっても中々欲しい物は買って貰えなかったけど当時人気だったリボンという漫画を買って貰えた。たった一冊だったけど何度も何度も繰り返し読んだ。
付録についていた「ママだいすき」というカードを見つけ
真似して同じ物を作った。母の日のカードだった
出来た!
お母さんに渡しに行った。
お母さんは大切に缶の箱にしまっていた
あれはまだ今でもどこかにあるのだろうか?
ある日お母さんが病気で仕事を休み寝込んでいた
家にはお母さんと私の2人きりだった。寝ているお母さんは私を呼んだ。
代わりに夕飯をマキちゃん作って貰えないか、教えるから
そんな感じだったと思う。
まだ小学校低学年の私はちゃんと料理なんてしたことがない
でもお母さんのため!がんばるぞ!作ったのはカレーだった。届かないから小さい箱を持ってきてそこに登り、言われた通りニンジンを包丁で切る。「お母さんできたよ!次は?」何度も寝ている母に聞きに行って初めて作った料理だった
私は小さい時からカレーが嫌いだ
今日の晩御飯は何?と聞いてカレーライスと言われたら、どれだけお腹が空いていても一瞬で食欲が無くなるくらいだ
でもいいんだ
見てて貰いたい
相手の為に尽くせば愛情を返して貰える
役にたちたい
喜んでくれたら嬉しい
人の顔色伺って言うこと聞けばいい
すごく満足する
そんな風に愛情を求める様になった根本はどこからかはわからないけど何もしなくても大切にされる。愛される事はない
自信がない
そういうのが自然と芽生えていた気がする
その日のカレーライスは特別だった




