幻覚
シンナーを吸っていると言葉で表せない幸福感があった
時には小さな妖精が部屋の中を飛び回り、捕まえようとしたり
ビニール袋の中のシンナーに金魚が泳いでいたりした
声が聞こえた
それ以上はやめないと赤ちゃん産めなくなるよ
幻覚でお腹の中の子宮にうずくまっている小さな赤ちゃんが見えた
やることもなく無免許でお母さんのスクーターに乗ったりして
中学の時に呼び出して来た先輩を見かけ友達と2人2ケツしながら
「バーカ!!ブス!!」
叫んで笑っていた。
幸子が言ってた。
「ひろくん彼女できたよ」
ショックだった
お母さんがちゃんとお勤めに行って欲しいと言った
お姉ちゃんは看護師になり病院の寮に入っていた
お姉ちゃんの病院で一緒に寮に入れてもらって働きなさい
痴呆の入り交じる病棟で寮に入り働くことになった
お姉ちゃんは結婚も控えていて
実家に帰ることになった
「お給料が出たら毎月貯金しなさい」
お母さんが定期預金を作った。
初めての一人暮らしだった
病院ではナースの服を着て朝から患者のオムツ替え。食事の介助
年配のヘルパーさん達には嫌われていて聞こえるように悪口を言われていた
一年の時の担任の先生が私の様子を見に病院まで会いに来てくれた。
「元気で頑張ってるか?」
「あっ!先生!」
先生はもう定年退職をし、最後に受け持ったのが私のクラスだった。
学校に来なかった私を気にしていたと言ってくれた。
楠本くんは成績も良く上位の方だったんだよ。残念だったなぁ
少し話して先生は手を振り帰って行った。
また寮でもシンナーを吸った
仕事に行きたくなくて休んでしまった
部屋まで師長さんがきて注意された
「まぁ具合が悪いなら寝てなさい」
寮での楽しみはドラマ101回目のプロポーズを見ることだった
一人でバスでスーパーに行き家で料理して食べる
一人でいるのが嫌になった
何もしたくない
寂しい
お母さんの作ったご飯が食べたいな…
寮を出て私も実家に帰り通うことにした
別にヘルパーの仕事は嫌いではなかった
痴呆の一人のおばあちゃんが私を見るたび「ちーちゃん!!」と呼び、ちーちゃんという孫のフリをして会話していた
校長をしていたというおじいさんは頭はしっかりしていたが身体は不自由で
私は車椅子に移動しようと習った通りに、腰に手を回し股に片足を入れて持ち上げて回した。
ダーン!!
2人でひっくり返ってしまった
「ごめんね!ごめんね」
そういうとおじいさんは
「いいよ。大丈夫?」と答えてくれた。
当直もしなくてはならなくなり
本当にこれがやりたいことなのかと思い始める
朝礼の後師長に言った
「私、辞めます」
物凄く説教されたのを覚えている




