7/40
07. 夏の夜
私がまだ幼かった頃、一度だけ不思議な出来事を経験した。
あの日、私は家族と一緒に夏祭りへ出かけたものの、途中ではぐれてしまった。不安と恐怖で泣きじゃくっていた私の前に、やがて一匹の大きな白狐が草むらの中から姿を現した。
白狐は私のもとへ歩み寄ると、そっと袖口をくわえ、私について来るように促しているようだった。
私は泣き疲れたように、ただ呆然としたまま、白狐に導かれるようについて行くことしかできなかった。小さな林を抜けると、そこは祭りの会場の入り口だった。
白狐は振り返って私を見つめると、小さく鳴き声を上げ、そのまま林の中へと駆け去っていった。私が我に返った時には、心配していた母親に強く抱きしめられていた。
今でも花火大会の季節になるたび、私はあの夏の夜を思い出す。
そして、あの美しい白狐のことを、今でも少し懐かしく思うのだった。




