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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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04. 片隅の席

  最近は、ひとつ気になっていることがあった。

  よく通う喫茶店で、海辺に近い隅の席だけは、なぜかいつも誰も座っていない。店が混み合う時間帯でさえ、その席だけはぽつんと空いたままだった。

  そんなふうにあれこれと思いを巡らせていると、不意に視界の端に、店の老主人が二階から降りてくる姿が映った。穏やかな表情の老人は、灰色の小さなクッションを手に、客へ挨拶をしながら、やわらかな陽光が降り注ぐ隅の席へと向かっていく。

  老人はそっとクッションをテーブルの上に置き、誰かに話しかけるように、小さな声で何かをつぶやいた。

  気になった彼女は、ちょうど近くを通りかかった店員に尋ねてみた。

  すると、あの席はすでに亡くなった店猫が一番気に入っていた場所なのだという。

  猫がまだ元気だった頃、毎日の午後 、テーブルの上に飛び乗り、日向ぼっこをしていたそうだ。店長は猫が近づいてくるのを見ると、猫がやって来る前に、いつもお気に入りのクッションを先に置いていたのだという。

  店員は言った。

  もしかしたら、店猫は今でも店の中を歩き回っているのかもしれない。ただ、私たちには見えていないだけなのだ、と。

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