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物語ノ余白  作者: 丹夢
非日常のある日々
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31/40

31. 花

 「普段、この花たちの世話をしているの?」

 「ううん。この庭の植物は、全部おばあちゃんが……えっ!?」

 彼女は反射的に答えてから、少し遅れて相手が見知らぬ顔だということに気づいた。

 淡い紫色の長い巻き髪の少女が、ラベンダーの花壇の前にしゃがみ込んでいる。

 少女は先ほどの問いかけのあと、ずっと花にばかり目を向けているようだった。

 「あら、こんなところにいたのね!」

 ちょうど母親がお茶とお菓子を運んできた。

 彼女はすぐに母親のもとへ駆け寄った。

 「お母さん、あの人は誰!?どうして家にいるの?」

 「あの子?おばあちゃんの教え子よ。今日は少し風邪をひいているから、たぶん出てこられないと思うわ。」

 母親はそう言いながら、お茶とお菓子を傍らの木のテーブルに置いた。

 「そうなんだ。じゃあ、あとで挨拶して帰るね。」

 彼女は傍らで二人の会話を黙って聞いていた。

 ふと気づくと、少女の視線はずっと花壇に向けられたままだった。

 母親が庭を出ていったあと、少女はふと小さくため息をついた。

 その細い姿が、彼女の目の前で少しずつ薄れていった。

 『早く元気になってくれるといいな……』

 夕食のとき、彼女は母親にあの少女のことを話した。

 すると、母親は一瞬きょとんとした。

 「今日……家には誰も来てないわよ。」


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