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31. 花
「普段、この花たちの世話をしているの?」
「ううん。この庭の植物は、全部おばあちゃんが……えっ!?」
彼女は反射的に答えてから、少し遅れて相手が見知らぬ顔だということに気づいた。
淡い紫色の長い巻き髪の少女が、ラベンダーの花壇の前にしゃがみ込んでいる。
少女は先ほどの問いかけのあと、ずっと花にばかり目を向けているようだった。
「あら、こんなところにいたのね!」
ちょうど母親がお茶とお菓子を運んできた。
彼女はすぐに母親のもとへ駆け寄った。
「お母さん、あの人は誰!?どうして家にいるの?」
「あの子?おばあちゃんの教え子よ。今日は少し風邪をひいているから、たぶん出てこられないと思うわ。」
母親はそう言いながら、お茶とお菓子を傍らの木のテーブルに置いた。
「そうなんだ。じゃあ、あとで挨拶して帰るね。」
彼女は傍らで二人の会話を黙って聞いていた。
ふと気づくと、少女の視線はずっと花壇に向けられたままだった。
母親が庭を出ていったあと、少女はふと小さくため息をついた。
その細い姿が、彼女の目の前で少しずつ薄れていった。
『早く元気になってくれるといいな……』
夕食のとき、彼女は母親にあの少女のことを話した。
すると、母親は一瞬きょとんとした。
「今日……家には誰も来てないわよ。」




