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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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18/40

18. 海

 強い風が顔に吹きつけ、彼女の大好きな潮の香りを運んできた。

 傍らに置いていた花束が風に巻き上げられ、宙で一度くるりと舞う。

 次の瞬間には、崖の下へと落ちていった。

 泡立つ白波が、たちまち花束を呑み込んでいく。

 その光景を見つめているうちに、胸の奥にあった言葉にできない憂鬱も、一緒に洗い流されていくような気がした。

 彼女はスマートフォンを手に取り、指先で軽やかに画面を叩く。

『ごめん、たぶん間に合わない。今度また時間を合わせよう!』

 メッセージを送ったその瞬間、彼女は手際よくスマートフォンを機内モードに切り替えた。

 エンジンが再び低い音を響かせる中、彼女はハンドルを切る。

 振り返ることなく、来た道を戻っていった。


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