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17. 過去のこと
窓の外から聞こえる蝉の声を聞きながら、彼女はふと、数年前のあの夏を思い出した。
あの頃、時間があれば、友人が営んでいるカフェへ手伝いに行っていた。
仕事の合間に、行き交う客たちを眺めるのも好きだった。
いつも来る常連客の一人がいた。
その人は毎日のように店でしばらく過ごし、帰る前にはいつもブラックコーヒーを一杯持ち帰っていた。
その人の顔はもう覚えていない。
けれど、あの耳に残る声だけは、今でもはっきりと覚えている。
どんなに騒がしい場所にいても、すぐに聞き分けられる声だった。
けれど、翌年の夏になると、その見慣れた姿は二度と現れなかった。
友人によれば、その人はどうやら、この街を離れてしまったらしい。




