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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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17/40

17. 過去のこと

 窓の外から聞こえる蝉の声を聞きながら、彼女はふと、数年前のあの夏を思い出した。

 あの頃、時間があれば、友人が営んでいるカフェへ手伝いに行っていた。

 仕事の合間に、行き交う客たちを眺めるのも好きだった。

 いつも来る常連客の一人がいた。

 その人は毎日のように店でしばらく過ごし、帰る前にはいつもブラックコーヒーを一杯持ち帰っていた。

 その人の顔はもう覚えていない。

 けれど、あの耳に残る声だけは、今でもはっきりと覚えている。

 どんなに騒がしい場所にいても、すぐに聞き分けられる声だった。

 けれど、翌年の夏になると、その見慣れた姿は二度と現れなかった。

 友人によれば、その人はどうやら、この街を離れてしまったらしい。


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