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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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16/40

16. 同じ歌

 彼女は会場を見渡した。

 聞き覚えのある旋律が流れ始め、ふと、初めてこのバンドのライブを見に来たときのことを思い出す。

 あのときも、同じこのライブ会場だった。

 オープニング曲も、同じ曲だった。

 あの頃、彼女は隣の席に座っていた人と友達になった。

 二人でいろいろなライブの情報を教え合うようになり、少しずつほかのファンとも知り合っていった。

 気がつけば、いつの間にか一緒に旅行する計画まで立てるようになっていた。

 あの日々は、本当に楽しかった。

 ただ残念なことに、その後、何人かが遠くの街へ引っ越したり、生活環境が変わったりして、彼女もあの友人たちとはほとんど連絡を取らなくなっていた。

「ねえ! あなたも彼らのファン?」

「え? 私――」

 突然声をかけられ、彼女は思わず目を丸くした。

 顔を上げると、目の前の姿には見覚えがあった。

 個性的なヘアピンと、生成り色のキャンバスバッグ。

 それを見た瞬間、彼女は思わず口元をほころばせた。

「あなたは?」

「奇遇だね、私もだよ」

 声をかけてきた少女が笑った。

「本当は開演前に会いに行こうと思ってたんだけど、遅刻しちゃって……」

 それを聞いて、彼女は思わず笑い声を漏らした。

「「久しぶり!」」


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