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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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15/40

15. 習慣

 彼女は傘を差して寺の門前まで歩いてきた。読経の声に、ふと足を止める。

 外出するとき、彼女はいつもわざわざ遠回りをして、この寺を訪れていた。

 参拝するためではない。ただ境内をゆっくり一周し、ベンチで少し休んでから帰っていく。

 長い間、彼女はこの習慣を続けていた。

 まるで、通い続けていれば、あの人の姿にもう一度会えるような気がして。

 けれど、彼女はずっと分かっていた。

 会いたかった人は、もう二度と現れない。

 それでも彼女は、気づけばまたここへ来ていた。

 ――本当に、いい習慣とは言えない。それでも、やめられなかった。

 彼女は苦笑しながら首を横に振り、踵を返した。

 来週末こそは、もうここへ遠回りして来ませんように。


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