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物語ノ余白  作者: 丹夢
誰かの物語
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14/40

14. ベンチの上の陽だまり

 この本屋の前を通るたび、いつもベンチで眠っているゴールデン・レトリバーの姿があった。


 いつからだっただろう。

 ベンチの上にも、本屋の中にも、その姿を見かけなくなった。


 以前、店長と話したときに聞いたことがある。

 あの子は、もうすっかりおじいちゃんになったのだと。


 もしかしたら……あの子は風に乗って、遠い遠い国へ旅立ったのかもしれない。


 よく晴れた日に、彼女は久しぶりにその本屋を訪れた。

 引っ越してから、この辺りへ来ることはすっかり少なくなっていた。


 ショーウィンドウの前に置かれていた古びたベンチは、いつの間にか淡い色の木のベンチに変わっていた。


 その木のベンチの上では、二匹の子犬が日向ぼっこをしている。

 その金色の毛並みが、陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。


 チリン、チリン。


 短く刈った髪の店長が、店の中から出てきた。


 彼は腰をかがめ、子犬たちに優しく何か言葉をかける。

 それから笑顔で、二匹をそっと抱き上げ、店の中へ戻っていった。


 その光景を眺めているうちに、彼女の口元にも自然と笑みが浮かんだ。


 チリン、チリン。


 彼女はガラスの扉を押し開け、本屋の中へ入っていった。


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