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天才と変態は紙一重?



プーグルーグ・ルールクはカデン技師だ。

自らの工房を持ち、工房規模に見合った弟子を抱え、スイッチ1つで人に代わり特定の家事をこなす自動機械。つまり、カデンを設計製作するのがカデン技師の仕事だ。

全自動で家事を肩代わりするというが、実際それは大げさな売り文句と言える。カデンは確かに自分で考えて仕事をこなしている様に見えるが、実際には複数のスイッチからなる条件分岐に従って行動しているに過ぎない。例えば、壁にぶつかったら特定のスイッチが動作して方向を変える。とか、そういった単純な動きが積み重なって、あたかも考えて動作している様に見えるのだ。如何に細やかに、自然に見えるようにスイッチを組み上げていくのかが、カデン技師の腕の見せ所と言える。

しかし、このスイッチの設計からかけ離れた動作をするカデンが時折現れる。本当に奇跡としか言えない割合で、同一の量産品の中に自ら考えて動いているとしか思えない様な高性能な個体が紛れ込んでいる事があるのだ。

何故その様な個体が現れるのか、どういった原理で本来のスペックを超えた動作をするのか、それはまだ誰も解明していない。ただ、その人知を超えた高性能な個体は、家主が眠っている間に家主に代わって家事をこなす妖精の昔話になぞらえて『妖精憑き』と呼ばれ、高値で取り引きされている。

さて、話を戻してプーグルーグ・ルールクは、名のある工業都市からは遠く離れたヨークレー市に工房を構える初老のカデン技師だ。弟子も孫のルーク・ルールクただ1人で歳もレナよりも1つ下。まだまだ駆け出しと言っても良い弟子と技師の2人の小さな工房だ。

だが、ヨークレー市の青空通り367にあるプーグルーグ工房といえば、カデン技師には少し名の知れた存在だ。

特注品や自身の実験的なカデンが大半を占めて量産品は生産規模の都合でほとんど無いが、プーグルーグの製作したカデンの大半が妖精憑きと言われるべき反応を示したのだ。

何故これだけの確率で妖精憑きを生み出せるのか、学会はざわめき、多くの技師が謎を解き明かそうとプーグルーグ工房に押しかけた。そして、皆が途方に暮れ、絶望して帰っていった。

先程、妖精憑きと言われるべき、と説明した。妖精憑きだった、では無くだ。

プーグルーグの作品たちは確かに不思議としか言えない能力を持っている。まず人の言葉を理解して反応した。これは、これまでのどの妖精憑きにも無い特徴だった。そして、動作すればまるで生きているかのように繊細に、力強く家事を終えて見せた。そう、動作すれば、だ。

彼の妖精憑きは、性格に難があった。気まぐれで偏屈、頼んでも宥めても動かないときは絶対に動かない。それでも壊れて動かないのでは無いと解るのは、いちいちリアクションを返して寄越すからだ。イヤイヤと体震わせたり、そっぽを向いたり。カデンとしては壊れていると言えなくもないが、妖精憑きとしては個体差、性格とされ議論は落ち着いた。

後に、製作のたびに増え続けるプーグルーグの奇妙なカデンは妖精憑きではなく妖精付き。少しの羨望と多くの奇異の目を向けられ、一部から『プーグルーグの妖精付きカデン』と揶揄される様になった。

プーグルーグ・ルールクの目下の目標は、妖精の居ない普通のカデンを作ることである。


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