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ゴンパパの助けを借りて砂に埋もれた蒸気自動車を掘り起こすと、一行は近くの町へ向うことにした。
ケインは凹んだ車のフロントを見て悲しそうな顔をしていた。
ケインの持つ地図によると、町は思ったほど遠くはなく、車なら4~5時間の距離だった。
日も傾いて、空が群青に染まり始めた頃、遠くに町の明かりが見えてきた。
「あー、久しぶりの文明だわー」
ルリエは大いに喜んでいた。
一行は、小さな町の小さなモーテルに宿を取る。
セーツィ号は調査と整備を終え出発したと、夕食時に食堂で流れていたラジオが告げていた。レナたちの事は何も言ってはいなかった。
「セーツィ号行っちゃったね」
「でも、乗客3人もいないのに行っちゃうなんて、ひどいわね」
残念がるレナに、ルリエも同意の声をあげた。
「…立ち往生するなら別ルートで帰るって、あとで連絡したんですよ」
ルリエの様子に、ルークがおずおずと説明する。
「え、それじゃぁ、あたしたちが見つからなかったらどうするつもりだったのよ!?」
呆れたといった風のルリエに、
「結果オーライだろ?」
ケインは何故か楽しそうだった。
「ケイン、あなたの入れ知恵ね…」
「いいじゃねぇか、誘拐騒ぎも有耶無耶になったんだし。俺のナイス判断に感謝してもらいたいもんだぜ」
「あたしは、無事帰れたあたしの幸運に感謝するわよ」
「ちぇ」
ルリエの答えにケインは不服そうだった。
「それにしても、ピルルちゃんたちが拾ってきた宝石が野生機械の卵だったなんて驚きね」
町に着くまでの車の中で、ピルルの言葉をデイジーが身振り手振りで翻訳してくれたので、だいたいのことは皆に伝わっていた。
「あたしはこんな珍しい物を一日にふたつも見ちゃったことの方が驚きだわ。当面のお宝運使い切っちゃった気分よ」
「えー、とうぶんキラキラはお預けなの!?」
デイジーが泣きそうな顔でルリエを見る。
「気分よ、気分」
「なんだー。ビックリしたわー」
デイジーがほっと胸を撫で下ろす。
「ねぇ、もっかいスカーレット・ジェム見せてよ。こんなん一生に何度も見れないんだから、見れるときに見ておかないとね」
ルリエの催促に、レナがポシェットからスカーレット・ジェムを取り出す。
しかし、スカーレット・ジェムの輝きが失われつつあることに気づく。状態が悪いのは誰の目にも明らかだ。
「おい、これぁマズいんじゃないか?」
ケインがボソリとつぶやく。
この中で一番事情に詳しい…と思われるピルルに皆の視線が集中する。ピルルは悲しそうに、キュウ、と鳴いた。
「…やっぱり、良くないみたい」
声のトーンや仕草からそんな気はしていたが、言いにくそうにデイジーが通訳する。
「博士、どうしよう。助けてあげてよ。博士は物知りだもの、なんとか、なんとかできるでしょ?」
レナが半泣きで懇願する。
獣医の娘と2等技師が揃っても、そのどちらの常識も通じない野生機械の、しかも、誰もが始めて見る卵では打開策も浮かばない。しばしの沈黙の後、重苦しい空気の中、プーグルーグは一言「なんとかやってみようかの」と言って食堂を後にした。
部屋は2部屋とった。ルリエとレナが相部屋。ケインとルーク・プーグルーグが相部屋である。プーグルーグが去って残された4人と、1羽と1匹も各々部屋に戻っていった。』
レナとルリエの2人は、おのおの2つ並んだベッドに対面で座っている。しばし、沈黙が続き、やがて、レナがぽつりぽつりと話し始めた。
「わたしね。ルークをたたいちゃったの。ルークはわたしを助けてくれようとしたのに」
「レナちゃん…」
「でもね、今はこの子が心配で何も考えられない…」
涙目でつぶやいて、ぎゅっとスカーレット・ジェムを抱きしめる。「そうね。今は、その卵についていてあげなさい。ルーク君だっけ、見た目はぼーっとしてるけど、しっかりした子じゃない。きっと解ってくれるわよ」
「…うん」
スカーレット・ジェムを抱きしめたまま、レナが膝に顔を埋める。「ほらほら。ゆっくり休まないと、暗いほうに考えが行っちゃうわよ。もう寝なさい」「うん」優しく諭されて、レナはベットに入る。「おやすみ、レナちゃん」「…おやすみなさい」ルリエは部屋の明かりを消した。
小さなテーブルで一人、ちびちびとバーボンを飲んでいたケインは、ベットに仰向けになったままジッと天井を見つめているルークをチラリと見て、再びコップに視線を落す。そして、またチラリと見やり、コップを空ける。またまたチラリと見て…。
「何暗い顔してんだよ?」ルークとレナがずっとぎくしゃくしてるのに気づいていたケインは、たまらずルークに問うた。
「いえ、そんなことない…です」
「はぁ、折角無事にお姫様に会えたんだろ?もっと嬉しそうな顔しろや」
「そ、そんなんじゃないですってば」
慌てるルークに、すっと目を細めて真面目な表情を作るケイン。「なぁ、ルーク。男ならぐだぐだ考えてないで、今出来ることを全力でしろ。結果なんてのは後から勝手に付いて来るもんだ」
ハッキリ、ゆっくりと告げる。ケインの言葉にガバリと起き上がるルーク
「お、やる気になったか」
笑うケインに
「ありがとうございます!僕、博士を手伝ってきます!」
そう行って飛び出していった。
「…はー、そうきたか。そーいうこっちゃねぇんだが。お姫様のために何かやろうってんだし…。まぁ、いいかぁ」
グラスにバーボンを注いで、くいっとあおった。




