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2 06


2 06


熱い日差しの中、うつむいて黙々と進むレナとルリエ。疲労も頂点に達しようかという頃、

「ようやく見つけたわ」

そんな声に呼ばれて顔を上げると、そこには日よけのマントを被った少女が立っていた。マントの下は場違いな程ピシッとしたベストにズボンのスーツ姿。

「あ、本当に人に会ったわ」

ルリエが気の抜けたことをいう。

「何を寝ぼけたことを言ってるのかしら?南国色のティーエ」

「折角会うなら、他の人が良かったって思ったのよ。運命の浪費だわ」

「運命?運命や偶然なんかで、こんな砂漠の中で出会える訳が無いでしょう?必然よ。あなたを訪ねてきたのだから」

「あらあら、でも助けに来てくれたわけでは無さそうね?」

「えぇ。私たちの仕事の邪魔をして何をいってるのかしら」

「邪魔?お互いの仕事には関与しないのが鉄則でしょう?そもそも、あたしはあんた達のやることにいちいち首突っ込む程物好きじゃないわ」

「まだシラをきる気なの。ルイセから奪った物をおとなしく返しなさい」

「はぁ?メイナと違って可愛げあるルイセにカツアゲなんてしないわよ」

「可愛げなくて悪かったわね。あれは南風伯のお使いなの。あなたがどうこうして良い品じゃないのよ」

ルリエの挑発に乗せられて、少女の声のトーンが一段上がった。

「口を開けば南風伯南風伯ってうっさいわね。こんな暑くて機嫌悪いときにアイツの陰気な顔なんか思い出させないでよ」

心底嫌だったのだろう、ルリエの声にもイライラが募る。

「どうあっても返さないつもりね」

「だから何言ってるか解かんないっての!」

「南風伯への裏切りと受け取っても良いのかしら?」

「そうね、あたしの邪魔をするならそれも仕方ないんじゃなくて?」

「南国色の怪盗団への忠誠はどうした!」

「そんなもの誓った覚えはないわよ。あたしは、あたしのやりたい様にさせてもらうわ」

「なっ…」

「たまたま利害関係が一致していただけよ、あのオジサンの下についたつもりは無いの」

言葉を詰まらせる少女ににルリエが畳み掛ける。

「その…自分勝手な所が大嫌いなんだ!」

少女の感情が爆発した。

「嫌いで結構よ、いつまでもそうやって僻んでなさい」

「誰がっ」

口論がヒートアップしていく。というかもはや子供の喧嘩だ。

『このぉ!!』

互いに手が出そうになったところで、見かねたレナが止めに入る。「ちょっと、喧嘩はダメー!離れて、落ち着いてよ。ねーってば」しかし、レナ一人で2人を抑えることは到底無理だった。

「姉さん!」

砂丘の裏から一人の少年が駆けつける。レナはルリエを少年はメイナを抑えて二人を引き離す。

「はぁっ、はぁっ、今回のところはは引いてあげるわ」

少年に抑えられながら、悔しさを滲ませた表情で吐き捨てる。

「ふふん、何負け惜しみいってるのよ」

「なにをっ」

「ほらほら、かかって来なさいよ」

『「姉さん!」「ルリエおねーちゃん!」』

「ふ、ふふ。いいわ。ムキになりすぎた。ルイセ、帰るわよ」

急に冷めたように、少女はふいっと背を向けた。

「あ、はい」

少年も健気に姉の後を追う。

「待ちなさいっ」

しかし、ルリエの声は煙幕にかき消された。そして、視界を奪っていた煙が晴れるのと同時に上空から声が降ってくる

「次会うまでに奪った物を差し出すか、南風伯に反旗を翻すか、よく考えておくのね」

どう出したのか、メイナとルイセと呼ばれた少年は小型の気球に乗っていた。

「もっとも、次会うまでにミイラになっていなければだけどもね。それでは、ごきげんよう」

冷たい微笑を浮かべたメイナと、事の成り行きがいまひとつ掴めていない様な表情の少年を乗せて気球は高く舞い上がる。

「帰るなら帰り道くらい教えていきなさいよ!」

無茶苦茶なルリエの声を無視して、気球は去って行った。

「まったく、渡すも何もあたしは何も知らないっての」

憤慨するルリエにおずおずと

「ねぇ、あの気球を追いかけたら、町に着けるかな?」

レナが問う。

「無理ね。きっと見えなくなった所で方向を変える気よ。見たでしょ、あの底意地の悪さ!そういう子なのよ」

「そっか」

「でも、偶然かわざとか知らないけど、いいもの置いていってくれたわよ」

ルリエの指差すほうに、メイナたちが置いていったラクダがいた。

ラクダの足跡を辿れば、町に近づけるかもしれない。



「伯爵様、お調べになっていた件の資料が届きましてございます」

「うむ、読み上げてくれ」

執事の言葉に、執務の書類にペン

を走らせながらウェツラーが答える。

「工房博で消失したハルンベルド卿のスカーレットジェムですが、当時全く無名の商人から買ったとの事でございます。その商人はスカーレットジェムで得た財を元手に貴族会入りを果たしましたが、何らかの抗争に巻き込まれ、すぐに亡くなっております。跡継ぎもなく、まだ貴族会に交流も持つものも居なかったようで、これ以上の情報は得られませんでした」

「そうか」

「この筋からスカーレットジェムを探すのはやはり難しいかと」「例え消息が掴めようと、そのような者であれば手元に残さず全て売ってしまっているであろうな。ご苦労だった」

「もうひとつ。別邸に『外装』が届いてございますとの連絡が入っております」

「そうか、ついに届いたか。ふふふ…。私は明日朝に別邸へ向う。メイナが戻ったら別邸へ来るよう伝えろ」

「かしこまりました」


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