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そして、ラーゼリート観光の最終日。工房博の最終日でもある。明日には帰らなければならない。
博士は用事があるというので、レナはルークと二人でシルクイリュージョンのお芝居を見に行った。
お芝居を公演しているウェッツラー劇場は歴史ある風格の大きな建物で、ヨークレー市には無い豪華な劇場だった。
お芝居はちょっと難しくて解らないところもあったけど舞台は華やかで、人が宙に浮いたり消えたり、何も無い所から花吹雪が舞ったり、随所に盛り込まれた手品みたいな演出がとっても素敵で楽しめた。
シルクイリュージョンの舞台は、オペラとマジックを融合させた新しい劇で、この辺りで知らない者は居ないほど有名な劇団なのだそうだ。
公演後、レナとルークは花束を持ってルリエの控え室を訪れた。控え室へは、デイジーの熱烈な歓迎で中に案内された。
「ルリエおねーさん、すっごい綺麗だった!」
「素晴らしい舞台でした」
レナとルークが口々に賞賛する。
「でも、列車は出てこなかったね」
「ん?」
レナの声にルリエが首を傾げる。
「だって、昨日のお稽古でそんな事言ってなかった?」
「ん?あ。えーと。ほら、次のお芝居よ。あたしは常に次の舞台に向ってるの!」
「へぇ。さすが、プロの役者さんだね」
「うんうん。だから次のお芝居の内容はみんなには秘密よ?」
ルリエは口元で一本指を立てて、片目をつぶってみせた。
「おぉ、約束通り来てくれたんだな。ありがとよ」
不意に男性に声をかけられて、頭をクシャリと撫でられる。見ると
ほのかに見覚えのあるカウボーイのような格好をした無精ひげの男性が人懐こい笑顔で立っていた。
「あー、ピエロのおじさん!」
レナが指さすと、男性は少しだけムッとしたような表情をして
「おじさんにはまだ早いんじゃねーか。おにーさんにしておけ、な?」
そう言ってポケットからクシャクシャになったタバコを一本取り出して火をつけた。




