07
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翌日、今日もサンサンと真夏の陽光が降り注ぐ暑い一日になりそうだ。雲一つない真っ青の空が心地よい。
お昼前の空は空気が澄んでいて気持がいい。眼下には工房博会場がみわらせる。彼女は広大な会場を鼻唄を歌いながらぐるりと旋回してみせる。そして、ひとつの大きなガラス張りのガレージに目標をさだめると、滑空しての1つの空気取り窓からガレージの中に入っていく。中には複数のスポットライトでライトアップされた超豪華大陸横断鉄道セーツィ号が堂々とした姿で佇んでいる。
広々としたセーツィ号の屋上のウッドデッキに彼女は降り立って純白の羽根を休める。
「ルルル探検~♪ラララ偵察~♪」
純白のオウム、デイジーは、ご機嫌に即興の歌を歌いながらそのまま、セーツィ号の開け放たれた窓から車内への侵入を果たす。
「すごーい!中見るの初めて!!」
頭上を飛んでいったデイジーには気づかずに、レナとルークもセーツィ号の見物にやってきていた。
「レナちゃん、あんまりはしゃぐと危ないよ」
「大丈夫よ!ねね、一等客室行ってみようよ。廊下でさえこんなに豪華なのよ、絶対綺麗よ!」
アンティーク調にマホガニーに塗られた木造の壁には精緻な彫刻がほどこされている。レナは草木が絡み合った彫刻に軽く触れて、それがすべすべでささくれがないことを確認すると感心したように声を上げた。
「一等客室と機関室は入れないって書いてるよ」
パンフレットを見ながらルークが残念そうに答える。
「えー。それじゃ食堂…じゃなくて、ダンスホール!ダンスホール行こう!」
「えー。僕は操縦室が見たいな」
「ダメ。ダンスホール」
「じゃぁ、その次は操縦室だからね」
そんなやり取りをしながら2人は車内の奥へと駆けていく。
「超豪華大陸横断鉄道セーツィ号は、エドワード・テジヴィー伯爵の事業により開業した最新の旅客列車で、全長96.8メートル・全幅18.4メートル・4階建て・屋上プール完備の一等・ニ等客車と、機関車が一体となった構造の1両編成。その名の通り豪華な設備と内装。通常の台車を二基並列で繋いだ特注の台車で2組4本のレールを走る巨大な鋼鉄製の車体を持つ今話題の鉄道で…」コンパニオンのお姉さんの解説を聞きながら、忙しなくダンスホールの装飾に目を走らせる。
ホール内は残念ながら、ダンスパーティーは行われていなかった。セーツィ号建造風景の写真パネルやセーツィ号にまつわる品々が並ぶ展示室になっている。ルークは建造風景や細かい資料を熱心に見入っていたが、レナは少し不満だった。
「ダンスパーティー見たかったな…」そんなつぶやきを聞いていたコンパニオンのオネーサンが
「ごめんなさいね。ダンスパーティーはやっていないけど、屋上のオープンカフェは実際の運行中と同じように開いているわよ。この時間なら、まだ空いているんじゃないかしら」
と、教えてくれた。
「ルーク、ルーク。オープンカフェ行こう」
「えー、操縦室って言ったのに」
「お昼になってしまいますと混んでまいりますので、お早目の方が宜しいかと思いますよ」
「仕方ないな。次こそ絶対操縦室だからね」
コンパニオンの助言にルークも渋々承諾する。
「探検おっしまーぃ」屋上厨房棟の通気口からデイジーがひょっこり顔を出す。「帰ってオヤツ食ーべよっと」そう言って、飛び立つ。デイジーはレナたちがくつろいでいるオープンカフェを抜けて、入ってきた窓からガラス張りのガレージを後にする。
「ルリエ、たっだいまーー」
「おかえりなさい、姫」
デイジーがルリエの肩にちょこんと止まる。
「ルリエ、おやつおやつ!」
「おやつの前に、中の様子を報告なさいな」
ルリエが呆れ顔でたしなめる。
「さあ、まずは進入ルートだけど」
テーブルにセーツィ号の間取り図を開いてペンを取る。
セーツィ号の乗客に配られる案内図で、客室と乗客向け施設・貨物の荷受け取り口くらいしか載っていない簡素なものだ。
これに、デイジーの説明…ほとんどが擬音と身振り手振りだったが…を元に細かに書き足していく。「通風孔はあたしでも通れる広さがあったのね?」「バッチリよん。姫が羽広げられる広さあったもの」「そう、これは使えるわね」「ルリエが太ってたら通れないかもだけど~」「あら、姫。おやつもお昼ご飯もいらないの?」「あーん、ウソですーー」
その日から数日間は、ルークと一緒に工房博会場へと出かけた。
会場は恐ろしく広い。数日かけても全部回れる気がしない。しかもただでさえ広いのに会場の各所にはイベントスペースが設けられており、そこでは時間替えで様々な発表が行われていて、見るたびに景色が変わっているのだ。
博士は寄り合いに参加したり、自分の発表の準備で忙しいらしく、別行動が続いた。




