03話 折角の夏休み。万国カデン技師博覧会に行こう! 01
3話のはじまりはじまりー。これまでとはすこし違うテイストなります。
01
真っ青な、抜けるような荒野の晴天の元、超豪華大陸横断鉄道セーツィ号は、モウモウと水蒸気の煙を上げながら、二対のレールを使い轟音を上げて疾走してゆく。派手なロイヤルブルーに塗られた車体が陽光を受けてキラリと煌めいた。
現在最も有名で、最も派手な怪盗「南国色の怪盗団」の襲撃騒ぎの真っ只中にあったが、この1等客室のあるフロアの殆んどの乗客がサロンに集まっている時間だったせいもあり、混乱もなく静かなものだった。遠くから、警備員や野次馬たちの騒ぐ声が微かに聞こえるのみである。
「やっと見つけた!危ないから早く部屋に戻りなさい!大人のいう事は…」
静寂を破って、とある1等客室の入り口で立ちつくす少女の後ろから、彼女を追いかけてきたのだろう、息を切らせた警備員の声が迫ってきた。だが、その声に反応したのは少女ではなく、客室内にいた別の女性だった。
際どい純白の派手な衣装に身を包んだ青髪の美女。この騒ぎの張本人、「南国色のティーエ」である。彼女は素早く部屋の窓を開けて窓の縁に手をかける。
「あっ」
小さく声を上げて少女⋯レナはティーエに飛びついた。飛び降りるのを止めようとしたのか、逃げるのを止めようとしたのか、彼女自身にも解らない。ただ、必死にティーエにしがみついた。
周囲から見れば南国色のティーエなのだろうが、レナにとっては気の良い劇団員のルリエである。
「お姉ちゃんはドロボウさんなんかじゃないよね?」
しがみついて、顔を豊満な胸に埋めたまま半泣きで訴えかける。
ティーエは一瞬、動きを止めて、胸元にしがみ付く少女の顔を見てふっと表情が緩む。しかし、それだけだった。
「ドロボウじゃないわ、怪盗よ」
さらりと言って微笑むと、
「レナちゃん、行くよ」
ティーエはレナにはお構いなしで、少女を抱えて窓から飛び降りた。「えっ!?」
レナの顔に動揺が走る。ここは3階だ、落ちたら只ではすまない。
「地面にぶつかる!」
と思ったが、その直前でふわりと上昇する感覚に包まれる。
ティーエとレナは、大きなトンボ型の野生機械に抱えられて空を飛んでいた。
「あ、そのキコウは!南国色の怪盗団!!」
さっきの警備兵が窓に駆け寄って、窓から半身を乗り出してこちらを指差しているのがちらりと見えた。
「ちょっと、なんでわたしも一緒に飛んでるのよ!」
レナが抗議の声を上げる。
「二人くらい乗れるわよ!あとで列車に降ろしてあげるから、とりあえず逃げるわよ」
「ダメっ、戻って!今ならまだ間に合う!」
レナが野生機械にお願いする。人でも動物でも、誰とでもすぐにお友達になれてしまうのはレナの特技と言ってもいいかもしれない。本来なら、主人であるティーエ以外の命令など聞くはずの無い野生機械が、レナの声に反応して戻ろうとする。「ちょっと、なにやってるの!逃げるのよ!!てか、何が間に合うのよ!?」
主人であるティーエも負けじと声を張り上げる。
「お願い、戻って」
「逃げるの」
「戻って!」
「逃げなさい!」
二人の言葉のどちらを聞いていいか解らず混乱するトンボ。遂には失速してまっ逆さまに。
「きゃーー!」
「「お願い!飛んで!!」」
地面に激突する寸でのところで偶然に、ふたりの声が綺麗にハモった。トンボは地上スレスレで態勢をたてなおすと、砂埃を巻き上げ超低空を滑り、セーツィ号に激突する直前で車体に沿って急上昇。空高く舞い上がり、滅茶苦茶に飛び回る。
二人とも悲鳴を上げながら振り落とされまいと、必死にトンボの足にしがみ付く。これまで経験したことの無い加速度に耐えながら、薄れ行く意識の中でレナはふと思う
「なんでこんなことになっちゃったんだろう?なんでドロボウさんと一緒に?なんで?…わたし、どうなっちゃうのよーーー!」
トンボは、2人を抱えたまま、渦を描くような軌跡を残して、猛スピードで空のかなたへと飛んでいった。
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