05
おまたせしました。冒険の時間で
す
次の日曜日、早速探検へと向かうことになり、朝の10時集合で、各々が探検に必要なものを持って穴の前に集まることになった。
レナが最後の一人だったようで、到着と同時に出発式が始まった。
「さて、皆さん揃ったわね。それでは早速何を持ってきたのか見せてちょうだい」
アリサが中央に立って指揮を執る。
まずはマレク。
「僕はこれだ」
背負いの大きなのバッグから取り出したのは丈夫そうなスコップだった。
「スコップ⋯ですの?」
「中で崩れている場所があった時はコイツで掘りながら進むんだ」
「そんな場所がないことを祈りますわ」
アリサが呆れたように言う。
「エリーは?」
「お弁当を持ってきたよ。みんなの分もあるよー」
手を挙げて元気よく答える。
「そうですか。よい心がけですわね」
アリサの表情が幾分か和らぐ。
「レナさんは?ずいぶんと荷物が多いようですけど」
レナの後に控えるゴンちゃんをきっと睨む。
アタッチメントにはたきとほうきをつけて、バンザイのポーズで固定されていたいた両腕がすっと下がる。
「あたしはアシスタントのゴンちゃんと、迷子にならないためのロープとラジオのデュークくん。後は簡単に食べられる軽食。みんなのぶんもあるよ」
「有難いけれどもエリーさんのお弁当がありますので、出番があるかはわかりませんわよ」
「大丈夫、お腹が空いた時に歩きながら食べる用よ」
「ふーん。まあいいですわ。出発しますわよ!」
「ちょっと待って、このロープの先をこうやって⋯」
言いながらロープの先をゴンちゃんの腕に括り付けてロープの束を持つ。レナが歩くと束が解けてスルスルとロープが延びていく
「ゴンちゃんはここでお留守番ね」
お留守番を言い渡されたゴンちゃんがショックで肩を落とす。
「だいじな役割なのよ。ゴンちゃんのおかげであたしたちは迷子にならずに済むんだから」
それを聞いて俄然やる気を出すゴンちゃん。シューシューと蒸気を吹きながら気合を入れる。
「何なのよ、このカデンは」
ゴンちゃんの様子を見てアリサが不審なものを見る目をする。
「全自動掃除機のゴンちゃんよ。博士に借りてきたの。こう見えて妖精付きなんだから。凄いのよ!」
「そうは見えませんけど、本当に妖精憑きなら大したものですわ」
付きと憑きでは意味合いが変わってくるのだが、その事には誰も気付いていない。
しかも、ゴンちゃんは褒められたのが嬉しかったようで両腕を腰に当てるポーズでずっと頷いている。
「それじゃあ行ってくるねー。
ここでしっかり待ってるんだよ?」
ゴンちゃんに別れを告げるとレナたちは岩の裂け目から内部に入っていった。
「きゃあ」
ばしゃんっ」早速足を滑らせてアリサが転んだ。
アリサちゃん、大丈夫?ひゃっ」
べチョン。エリーも転んだ。こういう時は下手に動かないほうが良い。レナは腰を低くして動かないように努める。
「ほら、明かり」
マレクが懐から懐中電燈を取り出して灯りを灯す。ボワーっと、フィラメントの明かりが周囲を柔らかく照らす。
「きゃあ!」
エリーの悲鳴が響いて狭い地下通路に木霊した。
恐怖に歪んだ視点の先には、壁に半ば埋まるようにして
巨大なトカゲのように見えるレリーフがこちらを見下ろしていた。
「大丈夫、岩で出来た彫刻よ」
「う、うん。なんだ、驚いたー」
巨大なトカゲのようなレリーフは、今にも襲ってきそうな迫力を感じる。古い伝説ではドラゴンと呼ばれているのだが、残念ながらこの時代にはほとんど伝わっていない。
「早く行こう」
レナは湧き上がる不安感を押し込めて、努めて明るく言う。
「もっと冷静になりなさい」アリサがエリーに苦言を呈するが、その目線は決してレリーフを見ることはない。
待ってて、明かりを増やすわ。
アリサはそう言うと火打ち石を取り出して、かちかちとうちー打ち合わせだす。しかし、先ほど転んだ際に濡らしてしまったらしい。火打ち石がつく気配はない。
「しかたがないわね。やっぱりこれね」懐からサバイバルマッチを出して火を灯す。それを持ってきていた松明に炎を移す。松ヤニでしっかりとコーティングされた松明はパチパチと音を上げながら燃えて、通路を照らすのに十分な灯りを灯す。
「マレクの懐中電灯じゃ照らせる範囲がでせまいのよ」
「そうは言っても松明よりも遠くを照らせるよ」アリサのいちゃもんにそう反論して明かりを通路の先に向ける。確かに松明では明かりの届かない距離までしっかりと照らし出している。
通路はしばらく延びた先で曲がっているのか、それともいき止まりなのか、正面の壁が明かりを反射していた。
「とりあえず、あそこまで行ってみよう」
マレクとアリサを先頭にゆっくりと歩き出す。もう足をとられて転ぶのが嫌なのだろう。アリサはマレクを出し抜こうとはしなかった。
突き当りまで来ると、通路は右に直角に曲がっていた。いき止まりでなくてよかった。
「危うく探検が終わってしまうところでしたわ」
「アリサの懸念が的中しなくて本当に良かったよ」
マレクもホッとしたようだ。
「行き止まりだったら帰れたのに」
エリーだけは不満を漏らしていた。レナも
内心では楽しんでいたのだ。折角重いロープを運んできたのにこれで終わっては勿体無いという思いもある。
直下に曲がった先の通路は続いていた。
しかも右にまがったり左にまがったりとくねくねと進む上に十字路になっている箇所も多く、その都度ああでもないこうでもないと言い合いながら適当部に進んできたのでここから戻れと言われても命綱、には頼りない細いロープをたどらなければ無理だろう。
キュラキュラキュ⋯。聞き馴染んだタイヤの音がする。キュラキュラ。
「え、ゴンちゃん!?」
暗闇の中か姿を現したのはゴンちゃんだった。おどろくレナの反応に、何が,?とでも言うようにはたきとほうきのアタッチメントがついた腕を頭のうえに乗せて考え込む仕草をする。
「待っててって言ったじゃない」
「何であなたがここにいますの?これじゃあ帰れないじゃない!」
アリサは半狂乱だ。
「え、大丈夫なの?通った道はきれいに掃除をしながら来た?」
確かに、ゴンちゃんの通ったあとを見るとピカピカとは言えないが、それなりにきれいになっている。
ゴンちゃんは自慢げにポーズを決めて、ブルルルルンと蒸気エンジンを震わせた。
「なんだか疲れましたわ、行きますわよ」
アリサが呆れ声で呟いて先に進む。
「これは何かしら」
通路の両方の壁に一定間隔で幅1メートル程の材質の異なる壁の区画が並んでいるのだ。
「さあ、なんだろうなぁ?横にスライドすれば扉なんだろうけども真ん中あたりの高さに真横に切れ目が入っている」言って横にスライドさせようと押してみるが右にも左にもびくともしない。
「ダメか」
一通り試して諦めたことろでピルルがレナのポケットから飛び出した。
「ピュリルーーー」
そして気になる区画の脇の壁にあるプレート板のようなものの前で静止すると、目がピンク色に光り出す。ピンク色の目でジッとプレートを見つめた後、2本の触覚のような足でプレートを触り出す。プレートをよくよく見てみると3x3の9つのボタンが付いていたようで、それを器用に押しているのだ。
右下のボタンをいくつか押すと、ゴゴゴゴと唸るような音を上げながら気になる区画の壁が中央の切れ目で上下に分かれてスライドしていった。そして、開いた壁の奥にはまたポッカリと空間が広がっていた。
「上下にスライドして開く扉なんて初めて見たよ」
マレクが興奮気味に感想を述べる。
「きゅいー、ぴいっぴ」
ピルルが何かを必死に説明する。
「ん、なあに?え、数字なの?うんうん上の3つが1から3で、まんなかの3つが4から6なんだ」
「キューイキュイ」
「いま扉を開けた番号は、2、9,8、9、8,9?
に、く、ぱ、く、ぱ、く?肉パクパク。なの?」
「よくわかるわね?」
アリサが呆れたように言って、松明を扉の奥に差し入れて中の様子を伺う。
「部屋ですわね」
簡潔に感想を述べた。
アリサちゃんって怖い物知らずよね
エリーもビクビクと怯えながらも中を覗き込んだ。
「うん、部屋ね」
エリーの感想も同様だった。
レナも中の様子を伺ってみる。
朽ちた簡素な造りのベッドとテーブル。それにちょっとした棚らしき物が見える。
簡素すぎるほどに簡素だが極端に私物のない部屋のように見えた。
ともかく、この奥は行き止まりだ。通路を進もう。
マレクもアリサも同じ考えだったようで、部屋を置いて先に歩みを進めだす。
「ここの通路のくぼみ、全部が扉なのかな」
マレクが疑問を口にする。
「ピュイイイ」
「そうみたいだよ」
「この子がそう言ってるの?」
「うん。開けたことはないけど、たぶんそうだって」
「そうやって意思疎通ができてるの不思議だね」
「そうね、なんとなくわかるんだ」
「それよりも、肉パクパク だって」
「なんだい、それは」
「さっきの扉のパスコード」
「ふーん、意味ありげだね」
「お肉が大好きだったとか?」
「まあ、好きな言葉をパスに使うのは定番だよね。忘れないから」
「そうね、きっとそうよね」
レナはどこかに引っかかるものを感じながらも納得することにして前を向く。
「ピルルゥー」
「うんそうね、それじゃあもう一箇所だけ」
「ぴゅい」
レナの言葉に反応して手短な扉の前で再び目が光る。こうやって使われているパスコードを読み取っているのだ。
「ピュイピュイ」
「29 29 5 5、え、肉肉ゴーゴー!?」
何なのかしら?楽しそうな響きもあるが。
ピルルの目が明るく光って開いた扉の奥を照らし出す。
部屋の中は、楽しそうなパスコードの響きとは裏腹に荒れに荒れていた。ベッドと棚は先ほどの部屋と同じなのだが、ベッドのシーツは引き剥がされて放り投げられたまま朽ちている。棚も扉が乱暴に開かれて、振り下ろされた斧のような物が刺さったまま放置されている。
「ヒエッ、これはホラーだわ」
続いては⋯。ピルルが次々と扉のパスを解析していく
「29 51 29。 29 90 90 肉 こい 肉。 肉 くれくれ 」
「29 71 42肉 無い 死に。 29 4242。肉 死に死に。⋯ちょっと待ってどんどん深刻になってきた」
レナはピルルに言って解析をやめさせる。
くそ、一体どうなっているんだ。野菜のプラントに次いで肉の培養プラントも動かねえ。」
突然現れた男が、鬼気迫る表情で訴えかける。
まだ若く働き盛りに見えるが頬はこけ、その目には生気が欠ける。
「おまけに今日になってなにもかもが軽くなっちまった。これは重力異常だ。ここも虚無にのみ込まれちまうんじゃないのか?おい、どうなんだ?返事をしろよ!」
男はおもむろに腰の手斧を抜くと、力いっぱい振りかぶって棚に叩きつけた。ぐしゃあ、と派手な音を立てて斧は棚に突き刺さったのだが、それが先ほどまでの朽ちた棚に残された斧のようなものとピッタリと一致した。
ふと我に返ると、最初に見た朽ちた部屋だった。
「え、今のは過去にここであったこと、なの」
まるで夢でも見ていたかのような気持ちであたりを見回す。
周囲に複数に気配がある。注意してみると、怪しく光る木の枝のような角を持ったキコウが複数いる。こちらが気づいたことを察したキコウはヒュンっと姿を消していく。
ついに、ここを放棄するときが来たわ。あなたたち、今までありがとう。これからは自由に生きなさい。何にも縛られることはないわ。あなたたちならば世界が元の環境に戻っても生きていけるでしょう?どうか、自由に。それが、私の最後の願い。
白衣を着た女性が怒るようなポーズで言葉を綴る。
「ワシはここに残るよ。いつの日かシステムを完成させて復旧させる。それがワシの望みだ。」
さっき見た彫刻のような巨大なトカゲが現れて厳かな声で宣言する。さっきは気が付かなかったが、トカゲの頭には立派な2本の角が生えて背中にはその巨体には不釣り合いな一対の小さな翼が生えていた。
「僕達大地を駆け続けるよ。生物が住めなくなったこの地でも僕達ならそれができる。生き物に溢れていた記憶を忘れないように、僕達が当時の風景を守っていくよ。」
「それに小さい奴らも自由にやっていくってさ」
「大丈夫、体は小さくて気分屋ではあるけれど、それなりにできる奴らだから。」
さっき見かけた角の生えたキコウ達がわらわらと音もなく集まってきてそんなことを言い合っている。
「さて、そこにいる人間達よ。む、お前は契約者の子孫か。盟約上この施設の事はおおやけにはせぬという事になっているはずだが」
トカゲが黄金の色の瞳でアリサを睨みつける。
「ヒッ。何も聞いていません。ここに入ったのも偶然。岩に空いた穴がここにつながっていたからで、本当に何も知らないんです!」
恐怖に怯えた目でそこまで一気に言って尻もちをつく。恐怖で腰が抜けてしまったのだ。
待って
レナがトカゲとアリサの間に割ってはいる。
「そのこの言うことは本当よ」
ここのことは何も知らないの。それに、岩に穴を空けてしまったのはあたしのせいでもあるの
あの穴はゴンちゃん大好きな猫のチョビちゃんに花束をプレゼントしようとしてボイラーを爆発させてしまって空けてしまったの。だから、ごめんなさい!」
「それとお主の責任にどう繋がるのかが理解できぬ」
「あたしが褒めちゃったの。凄いね、花束みたい、って」
「ほう、破裂した蒸気機関が花束みたいとは愉快なことをいう。あれほど禍々しい姿をしているものを花束とは愉快よのう。やはりお主には責任はないよ」
「それならアリサちゃんにはもっとないの」
「ふむ、よいよい。わかった。不問とするとしよう」
え、なんで庇ってくれるのよ。わたくしは意地悪ばかりしていたのに。そんなわたくしをどうして。。。」
アリサが後悔を自問し続ける。
そんな2人の様子を交互に見つめて、トカゲはふっと表情を緩ませた。
「時は流れても人の本質は変わっていないようだの」
トカゲは満足そうにつぶやくと、ゆっくりと霧が晴れるように消えていった。周囲にいたキコウたちも同じように消えて、周囲は元の静かな廃墟に戻っていた。
「アリサちゃん、今日はもう帰ろう
アリサの袖を引っ張ってエリーが催促する。
「そそそ、そうですわね。お腹も空いてきましたし、エリーのお弁当を食べて帰りましょうか」
「うん、そうしよう」
マレクも賛成の声を上げる。
「わーい、お弁当の時間ですね。」
エリーはそそくさとバックからバスケットを取り出すと中の蓋付きの深皿を次々に取り出していく。皿の中はポタージュだったりソースのたっぷりかかったお肉だったりと美味しそうなのだが、どこかにゆっくりと座って食べたいものばかりだった。
「部屋にある家具はどうですの?」
「ちょっと朽ちすぎていて危ないよ。子供の僕たちでさえ座った途端に崩れかねない」
アリサの提案にマレクが深刻な顔をしてそう評する。
「地面に直に座るのもやめたほうがいいね」
所々の水たまりと散らばった家具の残骸を指差して言う。
「それじゃあどうしましょう」
エリーが半泣きで兄に助けを求める。
「うーん、ここで食べるのは無理かな」
マレクがそう結論づけた。
「そんなぁ」
「まずは外を目指そう。そうすればゆっくり座れる場所もあるさ」
「そうですわね。早くここから出ましょう」
アリサが急かすように先陣を切って歩き出す。
危ない!
アリサが連なる家具の破片につまずいてしまったのをマレクが抱きとめる。
「ありがとう⋯」
アリサが伏し目がちに礼を述べた。
「いや、構わない。それにしても腹が減ったな」
え、ごめんなさい。あたしがちゃんとしたお弁当を作れなかったせいで。
エリーが泣き出してしまった
「いや、エリーのせいじゃない」
マレクが慌ててフォローに回る。
みんな焦っている。さっきの大きなトカゲに萎縮したままなのだ。緊張をほぐさないと。デュークくん、お願いね。
軽快な音楽に載せて女性が歌い上げる異国の音楽が流れる。こうしてしばらくは音楽を聴きながら進んでいった。
みんな、軽食を食べながら行こうよ。
レナはカバンから紙の包を取り出してみんなに配っていく。
なんですの、これは
お、うまそうだな、ありがとうレナ
早速紙包みを空けたマレクが口笛を吹く。
中に入っていたのはローストチキンやベーコン、卵焼きを挟んだパンだった。マレクは包を持ちながらほおばる。
「うん、うまいっ!」
マレクの反応を伺っていたアリサも堪らずかじりついた。
案外いけますわね。
それじゃぁ、あたしも。おいしーっ!
最後にはエリーも夢中で食べ始めた。
一行はラジオから流れる音楽とレナのサンドウィッチに元気をもらいながらゴンちゃんの通った足跡をたどっていく。
おい、こりゃあどっちだ?
十字路なのだが、正面と右の道の両方に掃除された形跡がある。
「ゴンちゃん、これはどういうこと?」
ブルンブルルン
「え、汚れが気になったから関係ない方にも行っちゃった?」
何やってるのよ!
いや、ちょっと待った。ここまでつながってきたってことは
寄り道しても途中で戻ってきてるってことだよね
そうか、間違えた方に行っても途中で汚くなるから、わかるって事ね
うん。そうなんだけど、そもそも帰りも掃除しながら来たみたいだよ
本当ですわね。正面の道には掃除された跡が2本付いてますわ」
「それじゃあ正解は右の道ね」
そういう事だね
ブルルンブルルン
ゴンちゃんは何をしているんだ。とでも言わんばかりにズンズンと右の道を進んでいく。
「あなたが余計なことをしたせいですのよ。理解してくださいませ」
アリサの苦言にゴンちゃんは体だけ振り返って頭のうえに手を乗せておどけてみせる。
「テヘッじゃありませんのよ!」
「なんだかいいコンビになったね」
「レナさん、お笑いコンビじゃないんですのよ」
ジト目で睨まれた。
「あははー、そろそろ外に出られるかなー。行こうゴンちゃん」
レナはゴンちゃんの手を引いて先を進んでいく。みおぼえのあるかどをまがると、先に明かりが漏れているのが見えた。
外だ。外の明かりが見えるよ
おー、やっと戻ってこれたな
「もう、妖精憑きのおかげで一時はどうなることかと思いましたわ」
わーん、やっとお外に戻れるのー?
各々が感想を述べてそとの明かりに向かって一斉に駆け出す。それをゴンちゃんが全力で追い抜いた。
タイヤが唸りを上げて回転し、泥水を跳ね除けながら一着で壁の崩れた場所にたどり着いてポーズを決める。
何やってますのよ!
ゴンちゃんがはね散らかした泥水がかかった顔を拭いながらアリサが睨みを利かせる。
ゴンちゃんはキメポーズのまま固まって、振り上げた腕が力無くゆっくりと落ちてくる。
わー、アリサちゃんごめんね。本当に落ち着かない子で…コラ、ゴンちゃん。ちゃんとごめんなさいしないと。
ブルルルウ⋯
ゴンちゃんは両腕を地面につけて頭を下げた。
「こんな動きまで教えているなんて凄いわね」
「教えたんじゃなくて学んだんだと思うわ。レイクに怒られたときの博士に似ていたもの」
こうして外に出ると手ごろな岩をテーブルに各々が程よい大きさの石を持ち寄ってそこに座ると、エリーがお弁当の準備を始める。
「「「いただきまーす」」」
テーブルに並んだごちそうを前に少し遅い時間の昼食を摂り始めた。
「美味しい!」
「ウチのシェフ以上ですわ」
「良かったー。そんなに褒めてもらえてうれしいわ」
大絶賛の中昼食を終えた。
それじゃあ、これで解散ということで」
アリサの言葉で解散となった。
「今日は探検も無事に終えて、皆さんとも仲良くなれた気がしますわ」
「そうだね、とても有意義な1日になったよ」
「トカゲさんが怖かったです」
「みんなとたくさんお話できてよかったわ」
「そう⋯ですわね」
レナの感想にアリサは言葉を詰まらせる。
ゴンちゃんが厳かな表情で皆をぐるりと見回す。
そして、その目線がエリーで止まると、エリーの手を取って高らかに持ち上げた。もう一方の腕が自分の頭部をたたく。カンカンカーン。ゴングの様な良い音がなった。
「えーとこれは、エリーちゃんが優勝って事!?」
「確かにあのお弁当は優勝に値しますわ。」
「やったな、エリー。凄いじゃないか」
「えへへー、ありがとうございますー」
アリサもマレクも絶賛してくれる。エリー本人もまんざらでもない様子だ。
だからといって、優勝って何なのだ?ふとした疑問が湧く。
「ゴンちゃん、優勝ってどういうこと?」
レナの問いかけにゴンちゃんはプイーとゆっくり視線を外すのだった。
「あなたには本当に驚かされてばかりですわね」
ゴンちゃんの挙動を見てアリサが呆れたように笑った。それは屈託のない最高の笑顔だった。
これにて第2話の完結です。もう少し
他人視点のエピソードも増やしていきたいですね。次回は割と大きな話になるかも…。




