表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/51

心歩み寄る日々3 (☆☆☆ ★★★)

 山間の景色が開けた高原で、わたしとベルファレスは汗を流しながら剣を交えていた。


「ふっ……」

「はっ……」


 ヒュンと剣が空を切り、ベルファレスの剣が髪先をかすめていく。

 少しでもタイミングを見誤れば、わたしの頬が赤く染まっていた。


 一切手を抜かない攻撃にわたしも俄然闘志が燃える。繰り出される一撃一撃を次々と交わしていく。


「どうした……逃げているばかりではないか……」


 ベルファレスが挑発した。だが、少し息が上がっている。


 確かにわたしは攻撃をよけてばかりいた。だがこれも計算のうち。


 最初に剣を交えた時、その力に圧倒された。

 人間の男は別として、剣と剣を合わせた競り合いになると確実に押し込まれ力負けしてしまう。


 攻撃に転じた時に生まれる一瞬の隙を狙っていたのだ。

 そうすれば勝機はある。


 だが、ベルファレスのリーチが長いため、よけると距離が開いてしまう。


(それならこうだ……!)


 ベルファレスが踏み込んでくるタイミングに合わせて、重心を下げながら間合いに入る。剣先を急所で寸止めし、「参った」と言わせれば……。

 頭の中で戦術を組み立て、勝ち取るために剣を繰り出す。


「……っ!?」


 急所までまだ距離があるところで、剣に硬いものがあたった。攻撃を阻まれている。


 ベルファレスが片腕でわたしの剣を防いでいた。

 なんと素手で。


 人間なら肘から腕が切り飛ばされているだろうが、彼は生身で剣を受けている。青白い皮膚には血が滲んでいるが、肉は裂かれていない。ドラクの肉体は力を込めれば硬化し、金属と等しいくらいに強くなるそうだ。


 まさか素手で剣を受けるとは。


 動揺し、力が緩みそうになるがなんとか耐える。


「フッ……」


 ベルファレスは不敵の笑みを浮かべこちらを見てくる。腕で剣を受けたまま、わたしを後ろへ後ろへ押し込む。


(しまった。また力業で……)


 このままでは負けてしまう。力は拮抗どころか押されている。


どうする?

 瞬きよりも短い時間で様々な策を巡らせ、「これしかない」と実感した策に賭けた。


 わたしはふっと体中のすべての力を抜き、一歩後ろに退いた。


「っ!? おおっ!?」


 力の均衡が破れ、ベルファレスは前に倒れ込んだ。全体重を預けた目の前の相手が力を抜くとは、予想がつかなかったようだ。


「うわっ!?」


 さらに予想外なことにわたしも巻き添えを食らって、ベルファレスに押し倒される形で草原に背を打った。


「……」


 寝転がるわたしにベルファレスが覆い被さっている。


 息がかかるくらいの距離から見下ろされ、瞬時にカッと体が熱くなった。

 心臓が高鳴って、胸がきゅっと痛くなる。


 わたしの両側を挟む形でベルファレスが手をついているので、逃げようにも逃げ出せない。ベルファレスの顔を見ているしかなかった。


 大人しくなったわたしの顔をベルファレスはジッと眺めていた。

 時間にして数秒後、わたしにとってはしばらくの間、赤面するわたしを見下ろしていたベルファレスがやっと口を開いた。


「……レラ。お前、そんなに俺が欲しかったか?」


 微笑むことなく、至って真剣な表情で。


「ち、ち、ち、ち、違う!」


 決闘していて何でそういう展開になる!?


 冷静になるどころか別の意味でさらに興奮してしまい、吠えるように大声で否定した。


「本気にするな。冗談だ」


 やっと口元を緩ませて笑うベルファレスだったが、冗談かどうかは怪しい。


 心臓が鳴り止まぬほどに騒がしく、深呼吸をしてもなかなか落ち着いてくれなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ