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心歩み寄る日々2 (☆☆☆)

 誓約の儀式を終えて以降、わたしはこのようにドラクの集落で自由に過ごせるようになった。


 ハティの勧めもあり、自分の口に合いそうな食料調達のため、周囲を散策をして過ごしている。


 ベルファレスも午前の執務が終わるとわたしのもとに合流した。執務とは何をやっているのかはわからないが、リグやハティなど、所謂宰相と呼ばれる家臣たちと政のあれこれを議論しているのだろう。

 

 牢屋から解放されてから、ドラク達の暮らしぶりがどのような様子かを知った。


 ドラクの居住区は石の城壁で囲まれた集落で、城塞都市よりも城塞集落と言う表現が見合う規模だった。

 

 その中に石を積み上げて作った家が点在し、ドラク一族の家族が住んでいる。子供と思われるドラクも見かけるが、長命のため成人と思われる姿が大半で、老年期の姿をしているものは見かけなかった。


 ……ベルファレスはいったい何年間生きているのだろうか?

 

 ベルファレスが暮らす城は一般のドラクの住居より高さも面積も大きいものの、平屋建て。祖国よりもずいぶん古い時代の造りで、城と呼ぶにはあまりにも簡素な石造りの屋敷だ。城壁の入り口から遠い場所に位置している。

 日常の世話や執政を担う家臣や護衛にあたる戦士達が住み込みで暮らし、役割分担がされている様子は祖国の宮廷と何らかわりがなかった。

 

 城の近くに護衛の戦士たちの詰所、武器置き場がある。詰所の前には広場があり、そこでは武具を身につけたドラクの戦士たちが鍛錬に精を出している。

 広場には木で組み立てられた物見席があり、集会や宴会、時には決闘場として使われていることが窺い知れる。

 ベルファレスと初めて剣を交えたのもこの広場だ。

 

 詰所の隣にはわたしが拘束されていた地下牢がある。

 地下に掘られた薄暗いところだ。もう二度とあそこには居たくはない。

 

 この集落の人口規模は数百人程度というところだ。


 城壁内を歩いていると、誰も彼も物珍しい顔をしてジロジロ見てくる。中には警戒心を剥き出しにして睨みつけてくる者もいるが、ベルファレスから贈られた牙の首飾りを見るなり、態度を一変させた。


 時々、「ベルファレス様の……」とヒソヒソ話し出す者もいる。知らないところで、わたしの存在が知れ渡っているようだ。

 


 しばらく散策すると、城壁の門にたどり着く。門番が待ち構えていた。

 


「城外に出すことはできません。ベルファレス様と共にいらしてください」

「やっぱり、だめか。ちょっと森の狩場に行きたいのだが」

「だめです。ここを通すわけにはいきません」

 

 一般のドラクは城外へ出て狩猟や採掘、冥界のエネルギーが溢れていると言われる洞窟に出かけたり、自由に過ごしているのだが、異民族のわたしは同じようにはできなかった。外に出るにはベルファレスの同伴が必須だった。

 儀式の洞窟からひとりで帰ってきた件があってからいっそう見張りが厳しくなったと言う。

 

 何度か知らんふりして通り過ぎようとしたが、その度に怒涛の勢いで槍を下ろされ止められる。

 

「どうしても、だめか」

「だめです」

 

 そう言う門番は、わたしをベルファレスの元へ連行した人物でもある。

 玉座の間でベルファレスと初めて対峙し、植民地化と我が国王への服従を要求したあの時だ。

 

 ドラクの集落の詳細な場所は知られていない。特務部が仕入れた機密情報からある程度場所を絞り込み、あたりをつけたエリアにわたしは向かった。数週間野宿をしながら探し回っていたところ、城外警備にあたっていたドラクに拘束された。

 捕まるのも連行されるのも敢えてで、“竜人族の王”に会う機会を得るための計画だった。

 

 あの時のドラクに、こうやって違う立場で出会うのも感慨深い。

 

 

「待たせたな」

 

 門番と押し問答を続けていると、ベルファレスがやってきた。

 わたしが振り向くのに合わせて、剣を投げ渡された。

 

「いや、待ってはいない」

 

 門番が警戒を解き、主君の通り道を作る。

 

「今日は何をしたい?」

 

 少し考えたあと、わたしはこう答えた。

 

「もう一度ベルと決闘がしたい」


 だから、今日は動きやすいようにローブではなく、チュニックとズボンを着用してきたのだ。

 

 何だか胸がワクワクする。楽しそうに答えるベルファレスの声もまた弾んでいた。

 

「いいだろう。もし、俺に勝ったらレラの望みは何でも叶えてやろう」

「言ったな!? 絶対勝ってやる」

「無理に決まっている」

「なんだと!? 今に見てろ、そう言ったことを後悔させてやる!」

 

 互いに強気な発言を吹っ掛け、笑い合いながら城外に広がる高原へ駆けていった。


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