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見捨てられた世界を気配遮断で生き延びた俺は神に助けられこの世界を解放する旅に出る  作者: しょた丼
〜第二章 チサとの出会いとジンの旅立ちの決意編〜
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第53話 チサの想い

チサはその小さな体を震わせてキラークィに頼む。チサは泣いてこそいなかったが、ジンがおらず不安を感じているのは誰の目から見ても明らかだった。


「しかしな......。その例のクイーンが生きている可能性がある以上は私達も迂闊には動けんのだ。分かってはくれんか?チサよ......。私達とてここまでしてくれた恩人を助けたくないわけではないのだ。」


キラークィは申し訳なさそうに言う。


だが、チサはもう我慢の限界だった。今まで出会ってからずっと近くにいたジンを自分の意思でとはいえ置き去りにしてしまったのだから。


チサが同一化の影響で海上で眠ってしまった時もジンはずっとチサを離さなかった。


チサが攫われた時だってジンは一晩で助けに来た。


寝る時も、移動も、食事も、戦闘も......ジンとチサはずっとずっと一緒だった。


なのに自分はジンを置いて1人安全な場所へ帰って来てしまったことをチサは悔いていた。


不死身とはいえ、今なお土に圧殺され続けているであろうジンを思うと、チサは居てもたってもいられなくなっていた。


「妾、例え誰も来なくともジンを助けに行くのじゃ!ジンは妾を危険を承知でずっと守ってくれたのに妾は安全な場所で待っているような事は出来ないのじゃ。妾はジンと共にゆくとそう決めたのじゃから!」


チサはそう言うと全速力で走り始める。その速度は凄まじいもので、ブラウンエルフ達の中に誰一人追い付けるものはいなかった。


だが、その少女の言葉に動き出す者達が居た。何と今最も疲れているであろうブラウンエルフの20名の精鋭達だった。


「我々もチサ殿を追います。彼女が動けて我々が疲れて休むなど帰って妻に笑われてしまいます。それに我らとて自らが殿となって自分達を救ってくれた恩人を、少々危険だからと見捨てる訳にはいきませんので。」


ブラウンエルフの精鋭達の指揮官はそう言うと、20名を連れて、もう見えなくなってしまったチサの後を追う。


「おい、待て!」


そうキラークィは咄嗟に言葉を発するも振り返る者はいなかった。


その後に来たのは、トリスとバッツ率いる人間の部隊100名だった。


トリスはその部隊から前に出てキラークィに言う。


「すまないが、俺達もあの2人には返しても返せぬほどの借りがある。だからいかせて貰う。」


トリスは言う。


「すいませんねぇ。ですが、受けた恩は仇にして返す訳にはいきませんからねぇ。それに、あの嬢ちゃんがあそこまで震えて頼む。それだけで動くには十分ってもんでしょう。」


バッツが続くと、人間達までもが、エルフの精鋭達を追ってゆく。


キラークィは頭を抱える。彼とてジンを助けには行きたいのだ。だが、クイーンの生死が不明である以上は迂闊な真似は出来なかった。


ジンが不死身であることを知っており、時間をかけて安全を確保しながら救出しても遅くはないと思っていたのだから。


だが、ジンとチサに触れた者達は違った。皆がなによりもジンを助けることを優先していた。もう事は動き出してしまった以上キラークィとて動かない訳にはいかない。


「皆、聞くが良い。私達の恩人である、勇敢にもこのフォレストアントのボスであると思われる個体に挑んだ少年ジンが今崩落した洞窟の中に閉じ込められておる!助けにいきたい者は、前を進む精鋭と人間達へついてゆけ。世界樹は私が護ろう。」


こうしてジン救出作戦は幕をあけるのだった。




俺は今全身押しつぶされては再生し押し返したかと思うとまた潰され―。


そんな時間をここ最近ずっと過ごしていた。痛いのは痛いのだが、こうまで続くと慣れてくる。

何日経ったのか。それは分からないが、深海になす術無く沈んでいった時のことが思い出される。


そんな俺の目に突然眩い光が差す。

そこには小さな泥に塗れた手が乗っていた。


「ジン、遅くなって悪かったの。助けに来たのじゃ。」


チサは泥まみれの身体で俺に言う。まだ首から下は埋まっているのだが、辺りを見回せば、何十人もの人が土砂の運搬や発掘作業をしていた。


「チサ、ありがとう。助けに来てくれて。」


そう半分泣くのを堪えているかの様なチサへ俺は声をかける。こうして、掘り出された俺はその泥と血に塗れた身体でチサを抱きしめたのだった。



その後、俺は倒したフォレストアントクイーンの死体をブラウンエルフ達に引き渡して、驚かれたり、指揮を失ってバラバラに散ったフォレストアントの駆除を手伝ったりした。


粗方フォレストアントの駆除が終わると、地上で生き延びた人々と、ブラウンエルフ達とで正式な和睦と、新たな同盟関係が結ばれた。幸い対立したのは三年程であったために両者にあった溝が埋まる日もそう遠くは無いだろうと俺は思った。


その後数日はキラークィに借りた家でチサと一緒に過ごした。その場所を拠点に観光もした。

フォレストアントが完全に殲滅されたあと、地上を探索した時、何処に隠れていたのかは分からないが、この大陸に来てから全く見なかった野生動物の姿もあった。


そして、俺達は俺とチサに武器とペンダントを譲ってくれた老婆の武器屋へ寄った。


「フェーッフェッフェッフェ!いらっしゃい......!おやぁ?あの時の少年じゃないかい。聞いたよ。あのフォレストアントのボスを倒してしまったんだってねぇ。」


「ええ。色々大変でしたが、なんとかなりました。」


「そして、少年、『黒影切』に認められた様だねぇ。」


「わかります?」


「そりゃ当然さあ。呼応先が私の元じゃ無くなったんだからねぇ。」


「その......呼応先ってどう言う物なんですか?」


「フェーッフェッフェッフェ!それは言うより体験するが易しだね。呼んでみるがいいさ。黒影切の名を!」


俺は黒影切の名を呼ぶ。


「黒影切!」


すると、俺の目の前に、インベントリに収納していた筈の二振りの黒刀が現れる。


「うお!!!」


俺は突然目の前に現れ、浮いている黒刀を見て驚き尻餅をつきそうになるのを何とか堪える。


「それが、呼応さ!少年が呼べばいつ如何なる場所にあろうとも黒影切は少年の元へ舞い戻る。逆に言えばこの刀は絶対に捨てる事はできない刀なのだよ。」


そして老婆は急に表情を今までの優しい顔から鬼気迫るかの様な顔へと変化させて言う。


「さぁて、少年も認められた様であるから、話しても良いだろうねぇ。この刀、『黒影切』の過去を!!」




というわけで、第53話でした。

次話で第2章完結です!

投稿遅くなり申し訳ありませんm(__)m

本日中に第二章最終話を投稿させて頂きたいと思っておりますので、是非とも読んで頂けると嬉しいです。


では、第54話もよろしくお願いします!


20/11/29


これから先が気になる!面白い!と思えた方は是非是非評価とブックマークをよろしくお願いします!


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