階段落ちの件
ところで。何より俺が最も気になっていたこと。そう。俺の階段落ちの件である。橘さんへの呪いの件が保留なら、あのアクシデントの原因も不明のまま、俺はくすぶり続けるということだ。藤村さんからは呪いではないと断定されたけれども。
そんなことを言ったら
「ああ、それか。呪いと言うよりは」
早瀬さん本読みながら、なんか歯切れ悪い。隠していること、いや知ってることあったら言ってくれって。気になるじゃないか。
「そうだな、真白」
早瀬さん、本を閉じて、どう言い出そうか迷ってる? え、そんな重大な真実があるの?
「あの時、真白お前は階上の俺を見ながら歩いていたよな」
ええ、そうですとも。先輩二人と一緒に探していて、次の授業の先生にも連れて来いって言われてましたからね。捜索対象が見つかったんですから。
「……分からんのか?」
何その言いにくそうな表情。まさかマジもんの呪いっつうか、魔術的な攻撃で、
「足元見て歩いていたか?」
つうことはなかった。そうか、自爆か。それを俺って……だって先輩女子たちマジでビビった顔してたじゃん。
「それにだ」
まだ続きがあるのか。
「時期を考えてみるといい」
と言われても、何をどう考えろと。
「高校初めての中間テスト。真白も珍しく休み時間にまで問題集解いていたろ。ということは睡眠時間はどうだった。慣れない生活に体がついていかなくて、とは俺の邪推ではなかろう」
反論がない。休み時間の俺の動向まで記憶している気持ち悪さはこの際脇に置いておく。早瀬さんの邪推でなくとも、俺の記憶がまさに寝不足とちょっとした頭痛、さらには人生初の肩こりなぞを催したと鮮明に思い出させていた。現にテスト終って爆睡しても、何日かすっきりしなかった……あ、和泉先輩たち来た日と被ってるな。腹も痛かったし。「珍しく」とか言ったのは忘れないでおこう、なんかの時に揚げ足とれるように臥薪嘗胆てやつだったけか。
「というのも可能性の一つだ。体調不良で集中力散漫、その結果として怪我をする、よくある話しだ」
声を震わせながら、まったくフォローになってないことを言ってから、
「まだ橘が落ち着いた行動になってない。ということはこの件は終わってない」
早瀬さんは読書を再開した。




