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残余  作者: 金子ふみよ


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19/21

早瀬さんが、どうして”ああ”なったかというと

 それにしても。どうしてもちょっと気になることがあって、週明け、俺は一人で先輩二人の教室を訪問した。昼休み、ちょっと長めの時間で俺の知らない早瀬さんのことを聞きたかったのだ。あの頭の良さで、なんで留年したのかなってことと、なぜ呪いについてあんなに前のめりになったのかってことだ。橘先輩の顔色が少し良くなっているようで、ほっとした。

「早瀬君、ご両親とお姉さんを事故で亡くしているの。その、噂がね出たみたいなの、呪われたんじゃないかって。早瀬君のお父さんが人類学だったか、民俗学だったかを専攻していて、その研究の一環で呪術関係を調べていたらしくて、そういう理由から」

「それ以来、早瀬君変わっちゃって、学校にも来なくなるし、その、いろいろね、するようになって」

 橘先輩、和泉先輩と順に話してくれて、よくもそこまでご存じで。それほど有名なわけだったわけか。んで、ああ、あの奇行か。ん? 奇行? まあ、ふいと気になるワードが出たがそれよりも、今は早瀬さんの方だ。つまり、早瀬さんはご家族に関わる真実が、事故ってのとは別にある。そうか、残余ってこのことか。

「でも、早瀬君、ちょっと一年の時より明るくなったみたい」

 あれでか? 俺には常にデレのないツンにしか見えんが。

「あの早瀬君にくっついていられるなんて、あなたも大したものかもね」

 すっかり憑き物が祓われたみたいなお二人ですがね、そうやって俺をからかってると、何をしでかしたか洗いざらいぶちまけますよ。

「褒め言葉だよ、ね、美和ちゃん」

 橘先輩の笑顔で、俺の方の憑き物も祓われた、ならいいんだが。俺は早瀬さんが言っていた残余というフレーズを思い出した。呪いがこう身近にあるとしたら、それは早瀬さんの身内に起こったことにも起こりえたのかもしれない証拠になる。それなら、藤村女史に……。俺は頭を掻いた。たとえ公式見解が異なっていても、そこにわずかでも痕跡があれば、それは残余なのだ。それを早瀬さんは見つけ出したいのだろう。見つければ、きっと納得できると思っているのだろう。言ってたじゃないか、犯人探しが目的じゃないって。きっと被害を受けている人、それは早瀬さん自身がそうかもしれない、その心象の慰めを求めているってことなんだろう。


 ほどなくして、橘先輩の症状が急速に好転。快調まではいかないものの、その劇的な変化に、その一端を早瀬さんが担ったと、情報が流布した。間違いじゃないし、それはいいんだが、「一年の真白ってのが早瀬の助手になった」という、まったくの不本意な鰭までついてしまった。

 ただ一点、橘先輩が奇声を発したり、血が出るまで爪を噛んだりなんてことは続いた。


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