橘邸を出た後
「ほら、これでも見るか?」
橘邸を出て、もうさすがに帰路だろうと歩いていた。すると、早瀬さんがタブレットを渡してきた。カバンを肩に担ぎ直して画面を見る。文献というか、記事というか。はっきり言って内容が分からん。単語単語をつまみ出していた。社会心理学、認知バイアス、トランスパーソナル心理学、云々カンヌン。他には当然として、呪いとか噂とか不思議現象とかの単語。つまり、さっきの俺のクレームへの返答と言うことか。
「ああ、これもな」
画面をスクロールした。学年、名前、証言内容、橘先輩との関係、云々カンヌン。これ、いつ調べたの? んで入力をいつの間に終えたんだろう。
容疑者と思われる人に何か目印がつけられているかと思ったが、なかった。つうことは、早瀬さんのおメガネにかなう怪しい人はいなかったってことか、そのメガネの度があっているかは知らんけど。あれ? 容疑者ならもう一人いるじゃないか。ドラマとかのオチのパターン。すなわち、橘先輩自身。
「自作自演と言いたいのだろ、それも調べてある」
ホント早いな、早瀬だけに。橘先輩について調べたというページを出してくれた。俺にはどっちかなんて判断つかなかった。
「もういいか、返してくれ」
立ち止まって早瀬さんが手を出していた。見ていたタブレットを返す。それをカバンにしまって、
「お前とはここまでだ、じゃあな」
気づけば駅前。横断歩道を渡れば、すぐ駅に入る。早瀬さんは言ってすぐすたすたと歩きだしていた。早瀬さんが何線で帰るとか知らんかったし、俺も帰ってサスペンス風に犯人捜しに挑戦してみようとかと、巻くほどの息もなくふうっと呼吸をすると、足が止まった。なんかスゲー気になることが浮かんだ。まさに「なんで今ここでそんなこと言う?」って、ドラマ見てて思うような。そう、早瀬さんは、俺「とはここまで」と言った。つうことは、もしかして一人でなんかする気とかじゃねえだろうな。俺は慌てて足音を立てないように、早瀬さんの後を追った。二三歩出して思い出した。神社に藁人形を確認するってこと。でも俺はもう足を止められなかった。




