僕とマーク!
僕は今、マークの家に来て居るんだ。実を言うと、家出と言うものをしているんだけど、理由は聞かないでね。
マークの家って実はお向かいさんだったんだ。築二百年のとっても立派なお屋敷で、中は何だか迷路みたいに複雑な作りをしてるんだ。マークって名家の跡取り息子なんだってさ。
笑っちゃうよね?
マークの部屋の前に来るまでに、二回もお手伝いさんに道を訪ねたんだ。マークって自分の家で迷うんだよ。
笑っちゃうよね?
此処まで、着物を着たお手伝いさんしか見かけてないんだけど、『家族は何処に居るの?』って聞いたら、『あの世』だってさ。
笑っちゃうよね?
……マークの部屋の中ってとっても狭いんだ。元々は広かったみたいなんだけど、ダンボール箱の山積みが敷き詰められてて、他にはベッドしか見えないんだよ。
ダンボールの中身には、イヤらしい本とかが一杯入ってるんだ。マークは硬派だから、こういう物が世に出回ってるのが許せないんだよ、だから自分で管理してるんだって。ほんっと、漢だね!僕、尊敬しちゃうよ。
「マークも、僕の事を政治家にしたいの?」
「マナブは、私の後継者にするんだよ」
マークは『奥さんにしたい位だ』とか言って、イヤらしい本の内容をチェックしながら、僕に答えてくれたんだ。管理するにしても処分するにしても中身を確認しない事には出来ないんだってさ。大変だね。
「マークって、政治家だったの?」
「違う!マナブには、我がペシミズム学園の応援団長になってもらう!」
「ペシミズム学園って言ったら、僕が行く学校じゃないかぁ!
マークって小学生だったの?」
僕は驚きの余り、手伝いの為にチェックしていた本を破り捨てた。
「馬鹿野郎!私のコレクションに何するんだ!
……いや違う、私は高校生だと言っただろ!
我がペシミズム学園は、小、中、高、更に大学までの一貫教育なんだ」
凄い!僕、そんな所に行くんだね。日本にそんな学校があったなんて知らなかったよ。
「……まぁ、金に物を言わせて作ったんだよ。後、大学は、私が卒業するのと同時に出来るんだよ。だから残念な事にまだ女子大生が居ないんだ……」
悲しそうに俯いて居るマークが可哀想だったから、僕はマークの肩に手を置き慰めてあげる事にしたんだ。
「良かったね」
僕は、マークに笑顔までサービスしてあげたのに、機嫌を直してくれないんだよ。本当に困っちゃうよ。僕はこの気不味い空気を何とかする為に、マークに色々質問する事にしたんだ。
場の空気を考えるなんて、僕って大人だね!
「……ねぇ、なんで僕が後継者なの?
僕、小学生なんだよ」
「……マナブ君のお母さんが余りにも綺麗だったから、つい出来心で……本当は家庭教師なんてしたくなかったんだっ!
……でも断れなかったんだよ」
なんだって!
心底、僕に惚れ込んだからじゃあないのかい?
あんなにも僕に懐いてたじゃないか、それも嘘だって言うのかよっ!
僕はショックの余り、マークの参考資料を三冊程、破り捨ててあげた。
「あっ!それはお気に入りだぞ、やめるんだ!
マナブ君落ち着くんだ。……落ち着いて話し合おう」
「僕はアクションスターになるんだよっ!」
僕の真剣な決意と眼差しに、マークは感動して涙すら浮かべていた。
「君なら、なれるさ。だから、もう私のコレクションを解放してくれ……」
「じゃあ早速、特訓開始だ!アチョ〜!」
僕は、マークの宝物に中国四千年の歴史を、蝶の様に舞いながら蜂の様に叩き込んだ。
あっ、これってボクシングだっけ?
「嗚呼、我が青春……」
少しだけ可哀想になって来たから、僕のジョークで和ませてあげる事にしたよ。
「……ごめんよ……マークは誰とも結婚出来ないよって言う、ちょっとしたジョークだったんだよ」
「なんで?意味は?」
「……もう読めないよ。……もうよめないよ。
……もう嫁無いよ……」
マークは両手を上げて僕に語り掛ける。
「分かったよ。マナブには適わないよ。私が責任を持って立派な応援団長にしてみせるよ」
えっ!僕、応援団長にならなきゃいけないの?
教えて!マクギブソン
続く




