お迎えなんて怖くない!
僕は今、ナッちゃんが通っている保育園の前に居るんだ、此処まではなかなか険しい道のりだったよ。
マークがいなかったら僕は今頃、お墓の中に入ってる所だよ。
ありがとうマーク、君は家庭教師からボディーガードに格上げしたよ。
さっさとナッちゃんを連れて帰らないと外は危険がいっぱいだよ。
「おにぃちゃ〜ん」
ナッちゃんが、僕を見つけるなり、僕に飛び付いてきたんだ。
ナッちゃんは何時までたっても、甘えん坊さんだね。
その時、光沢のある黒光りした素敵な物体が視界に入り、僕は思わず其に手を這わした。
「ナッちゃんこれは」
この無駄に光っている黒い色。この僕のほっぺたみたいに滑らかな手触り。この究極の曲線美を表したフォルム。間違いなく僕のランドセルだ!
ムっ!
僕のランドセルの背に落書きを発見。
【 WE LOVE ROCK'N'ROLL】
ナッちゃんに何があったって言うんだ、まだ三歳なんだぞ。ナッちゃんには、まだ早いよ。
僕がランドセルの落書きの部分に、舐めまわす用な熱い視線を送っていると、ナッちゃんが満面の笑顔を浮かべ僕に自慢するんだ。
「いいでしょ〜♪ママがかいてくれたんだよ〜」
母さん、ナッちゃんをどうしたいんだよ。
くそっ、擦っても落ちないじゃないか。母さん、マニキュアで落書きなんてしないでよ。
「ナッちゃん、保育園にどうしてランドセルを持って来たの?」
「ハヤクおとなになりたいってゆったら、ママがくれたの」
何が大人だよ、ランドセルっていったら子供の象徴じゃないか。
「ナッちゃんのポーチは、どうしたの?」
「あさ、ママにプレゼントしたって、ゆったよ〜」
そういう事か!
ナッちゃんにとってポーチはランドセルだったんだ。僕とした事が迂濶だったよ、ナッちゃんはまだ三歳児なんだ、分からなくったってしょうがないよね。僕は、これでまた一つお利口さんになったよ。
という事は、始めから母さんのせいだったんじゃないか。
そんな事より、マークを近くのコンビニに待たせてるんだった。
決っして暑いからって涼みに行った訳じゃないよ。マークはそんな人じゃない、マークが来ると園児達が怯えちゃうからだよ。きっとそうだよ、僕は信じてるよ、マーク。
「ごめんよナッちゃん、コンビニに人を待たせてたんだ。急いで行こう」
僕はナッちゃんの手をとり、仲良く早足でコンビニに向かう事にした。
コンビニに着いた僕達はすぐにマークを見つける事が出来た。マークって大きいから凄く目立つんだ。
「おにぃちゃん、あのしと、だぁれぇ?」
ナッちゃん、人を指差すのは失礼なんだよ。
お兄ちゃんである僕がしっかり叱ってあげないと、このままでは将来ナッちゃんが、自分勝手で周りを観ない人間になってしまうかもしれない。
「ナッちゃん、人を指差していいのは、名探偵かコンサート中のミュージシャンだけなんだよ」
「マナブ君、それは偏見だよ。他にもいっぱい、いるはずだよ」
いつの間にか、マークが近くまで来てたんだ、気が付かなかったよ。
「お嬢ちゃん、お名前はなんて言うのかな?」
マークがナッちゃんに向かって微笑んでいたんだ、とっても不気味だよ。ナッちゃんが僕の背中に隠れてしまったじゃないか。
「ナッちゃん、マークは悪い人ではないから大丈夫だよ」
僕の言葉を聞き、ナッちゃんは僕の背中から顔だけ覗かせて絞るように声を出した。
「アタシはナッちゃんです。おじちゃんは?」
ナッちゃん、制服来てるのに、おじちゃんなんて言ったら駄目だよ。今度はマークがむくれてしまったじゃないか。
「ごめんよマーク、ナッちゃんはお髭が苦手なんだ。本当はおじちゃんだなんて思ってないよ」
マークは髭をつまみながら、僕を睨んでる。
「……マークでいいよ」
ぶすっとしながらボソボソと溢す用に言わないでよ、僕に。
「マーくん?」
ナッちゃんがつぶらな瞳で僕を見上げるんだ。
違うよ、マクギブソンって言うんだよ。
それなのにマークの顔に笑顔が戻ってしまったんだ。やめてよマーク、またナッちゃんが怯えてしまうじゃないか。
まぁ、いいんだけどね。そんな事より早く帰りたいよ。
僕は早く帰ろうとしたんだけど、マークがまだ涼みたいって駄久こねるんだ。
そんな事してたら、真面目に働いてる店員さんに申し訳ないよ。
「それじゃあマーク、作戦会議を開こう。僕達が来た道は、ナッちゃんには少し厳しいと思うんだ」
しっかり帰宅ルートを考えないと。
ナッちゃんは僕が守るとして、僕はマークが守ってくれるし。
マークはナッちゃんに守って貰おう。
少し不安だけどなんとかなるよね。
「マナブ君。実は裏技があるんだけど聞きたいかい?」
なんだって!
教えて!マクギブソン
続く




