ジョージは友達!
僕は今、マークと一緒に病院に来て居るんだ。
……実は、昨日の夜中にマークから電話があったんだけど、どうやらジョージが入院してしまったみたいなんだ。
マークの話に因ると、ジョージは謎のスナイパーに襲撃されたんだってさ。
本当に世知辛い世の中だね! 恐ろしくって、一人でコンビニにも行けないよ。
――と言う訳で、ジョージのお見舞いに来て居るんだけど、ジョージが入院してる個室のベッドの上に、ミイラ男が寝転がって居るんだよ。
思いの外、重傷だったんだね?
「ねぇ、マーク。あの人って本当にジョージなの?」
僕は、ミイラ男に話しを聞かれない様に、マークに耳打ちした。
「勿論、本物だよ。
ジョージは私の友人と言う事で、取り分け手厚く看護して貰って居るのだよ」
僕は、尊敬の眼差しをマークに送ったよ。
マークって友達思いなんだねっ! 僕、見直しちゃったよ!
「ふ〜ん、ジョージって見るからに瀕死なんだけど、助かるの?」
「もし、ジョージが助からなかったら、この病院を潰して見せるよ……」
マークは哀愁を漂わせながら、ジョージを労る様に見つめて居たんだ。
「誰だ! 其処に居るのは! ……マークか? もう一人は誰だ? 知らない声の様な気がするけど……」
ジョージが室内を見渡しながら、急に話し掛けて来たんだ。
ジョージは全身、包帯でぐるぐる巻きにされてるから、起きてるのか、寝てるのか、分かんなかったよ。紛らわしいよねぇ?
僕は、どうして良いのか分からず、マークに助けを求めたんだけど、微笑んでるマークにジョージの方向へと背中を押されてしまったんだ。
僕の事ちゃんと紹介してよ! 何となく気不味いじゃないか!
「あ、あの、僕はマナブと言う者です」
僕が声を掛けた途端に、ジョージがそれまで振り回してた頭を止め、僕の方に向き直ったんだ。
ジョージは目が見えなくなるほど包帯を巻かれてるみたいなんだ。手も指の隙間が出来ない位に分厚く巻かれてるから、自分で包帯を外せる程、動かせないんだね。
「君が、マナブ君なのか? 話はマークから聞いてるよ。
俺に弟子入りしたいんだろ?
これからヨロシクっ!」
ジョージはそう言うと、僕の隣に居るマークに手を差し出したんだ。
可哀想に、頭を強く打ち付けたんだね。そのせいで幻聴が聞こえるみたいなんだ。
いやっ、妄想癖かな?
「違います。僕はマークの後継者です。
特に、あなたから教わる事は無いと思います」
「なんだってぇぇぇ!」
マークに、差し出した手を払われたジョージは、ひっくり返されたカエルみたいな格好で仰向けになってるんだ。
「……ジョージ、悪いけど、マナブ君の方がジョージよりも格が上なんだよ」
「な、な、なんだってぇぇぇぇぇ!」
ジョージは一度起き上がって、突き出した左手を震わせた後に、またさっきと同じポーズをとるんだ。
「……あの、見た目よりも元気装なんですけど、怪我は大丈夫なんですか?」
「……いや、目が覚めたら俺は、病院に居たんだ。
医者は何も言ってくれないし……
俺はもう長くはないだろう……」
俯き、鼻を鳴らして居たジョージに、じゃあ大人しくしてなよ、と言う言葉を掛けて上げる事は出来なかったよ。
そんなに酷い怪我なら、動ける訳無いだろっ!
「ジョージ……
お前の大事な鼻の、頭の皮が擦り剥けてしまったんだ……
大事をとって、向こう三年間は入院して貰う事にしたよ」
「な、な、な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!」
ジョージが余りにも煩いから、若くて綺麗な看護婦さんが注意しに来てしまったんだ。
「あなた達! 野次君は怪我人なのよ、それと他の患者さんも居るんだから、少し静かにして下さい」
野次って、ジョージの事かなぁ?
「あ、あの、煩くしてるのはジョージだけですよ」
看護婦さんは首を傾げ、少し不思議そうな顔をしてたんだけど、作った笑顔を浮かべて僕の頭を撫でて来たんだ。
「あら〜、僕は、お兄さんのお見舞いに来たのかなぁ?
えらいねぇ〜」
「い、いえ、違います。ジョージは僕の部下と言うか、手下と言うか、そんな所です」
僕に構わないでよ!
そんな事されたら、僕がマークに睨まれちゃうんだよ!
「あ、あの、僕の事は良いですから、ジョージの包帯でも取り替えてあげて下さい。
何かあのままだと居辛いみたいなんで」
「あら〜、良く気が付く優しい子なのねぇ。
えらいねぇ〜」
看護婦さんは僕を放してくれるどころか、抱き着いて来たんだ。
そのせいでマークは及び、ジョージまで怒りだしたんだ。
マークは青筋を立ててたから直ぐに分かったんだけど、ジョージは両手を使って自分の感情を表現してるんだ。
それだけでは飽きたらず、プンプンって小声で言ってるんだよ。
気付いてるから止めてよそれ。気味が悪いよ。
「それじゃあ、仕様がないから包帯を替えましょうか……野次君?」
「ええ、是非ともお願いします」
看護婦さんに恥ずかしいポーズを見られたんだけど、ジョージは何事も無かった様に対応したんだ。
結構、図太いね!
唯、見られた事に気付いてないだけかも知れないけどね。
「……」
ジョージの包帯を替えてる看護婦さんに不手際がないか、マークが険しい顔付きで見張ってるんだ。
マークの視線が、看護婦さんの肉付きの良いお尻を捕えて離さないんだよ。
こんなに心配されてるなんてジョージって幸せ者だね!
包帯を巻き終えた看護婦さんが、軽く挨拶してこの部屋を出て行こうとしたんだけど、マークがそれを止めたんだ。
「看護婦さん! ジョージの体温とか、血圧とか、計って行かないのですか!?」
「そ、それは、朝に済ませましたけど?
どうかなさいましたか?」
マークはジョージの為に、看護婦さんに縋り付いて頼み込んだんだ。
少しだけ妬けちゃったよ。
「点滴でも、献血でも何でも良いですから!
この際、ジョージをどうなさっても構いませんから! 後生だから! 後生ですからっ! お願いしますっ!」
マークは土下座までしたんだけど看護婦さんは、必要ありませんって言って怒りながら出て行ってしまったんだ。
「マナブ! もう帰るぞ! 私はとっても不愉快だ!」
僕達は、さっきよりも厳重に包帯を巻かれたジョージに挨拶して帰る事にしたんだ。
息は出来てるみたいだから大丈夫だよね?
部屋を出た僕は後ろを振り向いた。
扉のプレートには……
【259】とマジックで書かれてたんだ。
そう言えば、マークがお見舞いに菊の花を持って来てたんだけど、マークって本当にジョージの友達なの?
続く
あっ、そう言えば、ジョージの本名って『のつぎ ようじ』って言うんだってさ!
それじゃ、さよならっ!




