始まりのチャイム
テキーラの財務会計論計算の初回講義を終え、計は学内のカフェテリアでケセラの手作りのお弁当をモグモグ食べた。
唯は今日は来てないのかな?後ろから不意にポンと背中を叩かれた。
「何だ、計。ここでお昼食べてたんだね。」
「唯!もう今日は会えないかと思ったよ。」
唯は計の隣の席に腰かけ、自分のお弁当をモグモグ食べ始めた。計は知らず知らず唯に心惹かれて行っている自分自身の感情に気付き始めた。
「計はこれから?」
「うん。どうしようかな?」
「じゃあ一緒に自習室で簿記の勉強しよう。」
「そうだね!」
二人は時を忘れて、午後の自習室をほぼ貸し切り状態で一心不乱に簿記の勉強に没頭した。
”絶対に受かって見せる。受かって見せるんだから・・・・”
自習室に二人の電卓の音がバチバチとユニゾンのように鳴り響き、何とも言えない心地良い独特の緊張感の中で計は素早く丁寧に簿記のテキストを捲り、テキスト例題を黙々と解いていく・・・・・
唯の方をちらと見ると尋常じゃない集中力とスピードで電卓を叩き問題をスムーズに解きまくっている。
さすが簿記1級ホルダー。凄い・・・・
夕方5時になり街に蛍の光の音楽が流れると唯は伸びをして欠伸をした。計も思い切り伸びをする。
唯は計を軽く振り向いて話しかける。
「そろそろ上がる?」
「うん。」
白山通りを唯と歩き、計は恐る恐る唯を誘った。
「ねえ。良かったらこの後一緒にCDショップに寄らない?ディスクユニオンっていうお店が近くにあるんだ。」
「へー面白そうだね!良いよ。私も行きたい。」
「ありがとう。じゃあ一緒に行こう!」
お茶の水のディスクユニオンはCDの品ぞろえが素晴らしく良いことで音楽マニアの間では有名になっている。店内に入るとそこは沢山のロックバンドのCDが所狭しと陳列している。有名なバンドのCDもあればあまり知られていないバンドのCDも置いてある。
「わー!凄いね!こんなに沢山のアーティストのCDがあるんだ。」
「うん。僕のお気に入りのお店なんだ。」
計は70年代ハードロックのコーナーに行き、気になるバンドの作品を探した。LED ZEPPELINのPhysical Graffitiを手に取り買うことにした。
「へー!LED ZEPPELINかー。私も折角だから何か買ってみようかな?」
そう言って唯はSoundgarden のSuperunknownをセレクトした。ディスクユニオンの店内はどこか薄暗くどこか昭和なレトロな佇まいの雰囲気があり、まさにロック好きが集まりそうな場所だ。
ディスクユニオンを出てから計は唯にお礼した。
「唯、今日はCDショップ付き合ってくれてありがとう!」
「こちらこそね!じゃあまた明日ね。バイバイ!」
計は唯の後姿を見送ってから一人神保町に向かい東急半蔵門線に乗り込んだ。まだ大原に通い始めて1週間しか経ってないのにこの充実感は一体何だろう?
毎日がとても楽しく、キラキラしていて青春だ。
同時に唯のことを思うと胸が切なくギュッと締め付けられたような甘酸っぱい不思議な懐かしさにも思慕にも似た感情がこみ上げてくる。
きっと人はこういう感情を恋と呼ぶのだろう・・・・・・・




