アリ・テキーラ先生
翌朝4時にONE OK ROCK のじぶんROCKの目覚ましで計は目を覚ました。計はいつも通りまずうがいをして歯磨きをしてバナナを食べる。アイスコーヒーを一口飲んで簡単なストレッチをして体を目覚めさせてかルーティンの筋トレをする。スクワット、ニーアップ、ヒールレイズ、シャドーボクシング、上半身ひねり、プッシュアップ、プランク、バックプランク、背筋、レッグレイズ、クランチ、サイドクランチ、猫のポーズ。一通りの筋トレメニューを終えてもう一度アイスコーヒーを飲んでから川沿いを30分スロージョギングする。程良い汗が全身を伝う。ニューヨークヤンキースのベースボールキャップを目深に被り、颯爽と走る計は毎朝走るたびに全身がよりシャープに研ぎ澄まされていく感覚を覚える。今日のワークアウトの音楽はThe Rolling Stonesの90年代の名作 Bridges to Babylonだ。オープニングナンバーのFlip The Switch のイントロのキース・リチャーズのギターリフがザクザクと流れる瞬間に今でも背筋から鳥肌がぞわっと立つ。
30分のジョギングを終えてから冷水シャワーを浴びてオリエンテーションで配布されたテキーラ先生の講義レジュメを読みながら20分ほど半身浴をした。それから簿記のテキストを読む。お風呂の中でテキストを読むと知識の吸収率と定着率が断然良い。体と脳がリラックスしたフラットな感覚でテキストに書かれた情報が驚くほどスムーズに頭に入ってくる。
半身浴を終えて冷蔵庫で冷やしておいたミネラルウォーターを飲む。着替えをして朝食の前に1時間簿記の計算問題を解く。朝から電卓をバチバチ鳴らして計算演習をすると否が応でも目が覚める。
1時間の勉強トレーニングを終えて7時からケセラと朝食を一緒に食べる。ケセラは毎朝いつも計のために手作りの料理を作ってくれる。インスタント食品や出来合いの物は添加物が多く体に良くないことを知っている。特に計はまだ若く20代前半で精神的にも発育途上だ。きちんとしっかりした食生活をしていくことが弟の成長や人格形成、学力向上には欠かせない。
ケセラの今朝の手料理はブロッコリーと茄子と鶏むね肉のマヨネーズ和えとアサリの味噌汁、大根サラダを玄米に目玉焼き、デザートにブルーベリーとキウイ入りのアサイーヨーグルトだ。計がケセラの作った朝食をパクパクと美味しそうに食べているのを見守る時間がケセラにとって至福の時間でもあった。
朝7時半に家を出て大原に向かった。大原の財務会計論計算の講義は朝9時半からスタートした。テキーラ先生が講義を始める。前回がオリエンテーションだったので今日が財務会計論計算の講義の本編のスタートだ。初回は財務会計の仕組みの理解と簿記1巡、現金勘定だ。
「今日はまず最初に皆さんに貸借一致の原則を説明しますね。
<テキーラ先生のワンポイントレクチャー>
・貸借一致の原則
貸借一致の原則とは複式簿記において一つの取引に係る借方と貸方の金額合計が必ず同額になるという会計の基本原則です。会社の資産が負債や純資産から調達された資金に等しく、左右の合計が必ず一致する貸借対照表にも反映され財務諸表のバランスが取れていることを意味しますよ。
因みに貸借対照表との関連では資産がどのように運用されているのか、負債や純資産がどのように調達されているのかを示しています。
「みんなOK? ついてこれてますか?」
「これから皆さんと簿記の勉強を一緒にしていきますね。今日はまず最初にこの公認会計士試験の勉強でまず大前提となっている超重要な事実をひとつ皆さんに今から伝えます。良く聞いてください。」
テキーラ先生は急に神妙な表情になり教室にいる生徒たちを見回す。
「公認会計士の勉強をしていくうえで簿記の勉強は絶対に避けて通れません。そして公認会計士の勉強でとても有名な格言があります。」
「それは財務会計論を制する者が公認会計士試験を制する。です。」
「みんな。公認会計士試験はとても難しくハイレベルな相対評価の完全競争試験です。だけどこれだけはずっと忘れずにいてください。皆さんの努力はいつか必ず絶対に報われます!」
「みなさんは合格を必ず勝ち取れます。」
「私は見ての通り日本人ではありません。日本に来て公認会計士の勉強を始める前は日本語すら話せまでした。だけど私は自分自身に誓ったんです。猛勉強していつか必ず公認会計士試験に合格して見せるってね。」
「そして本当に公認会計士試験に合格したんです。」
「日本人でなく日本語すら知らなかったかつての私にも合格できたんです。皆さんに合格できないはずはない。そうでしょう?」
「皆さんはこの公認会計士試験に受かる人と受からない人の差ってなんだと思いますか?」
計はテキーラの問いかけに必死で考えを巡らせた。公認会計士試験に受かる人と受からない・・・・
一体なんだろう?
「それはね・・・良い?自分は必ずいつか合格できるって本気で思えるか思えないかの差です。」
なるほど・・・そういうことか。




