有栖川 唯
初回の財務会計論計算の講義はとても新鮮だった。
講師はアリ・テキーラというイラン系の女性でとても説明が明快で分かりやすかった。ハーフではあるが日本語もとても流暢だ。
計は講義中、丹念にノートにテキーラの講義のメモを取っていく。簿記の計算手続は一見すごく複雑で難しく感じたが、真面目が取り柄の計はテキーラ先生の説明の1つ1つをキチンと丁寧に聴いて理解が難しい箇所には?マークを付けて後でテキーラに質問することにした。
計は簿記2級までは既に持っていたが公認会計士の簿記はまるで別科目のようにハイレベルで難解に感じた。
3時間の講義は濃密でしかしあっという間に経過した。授業が終わると早速、計はテキーラ先生に質問に行った。
"Mr.Kai!質問してくれてありがとう!”
テキーラは優しく分かりやすく計の質問にひとつひとつ丁寧に答えてくれた。質問を終えると
「カイさん!一緒に合格目指して頑張って行きましょうね!」
テキーラは明るく言い放った。
教室を出て一人靖国通りを歩いていくと肩を後ろからポンと叩かれた。
「ねえ。君、名前何て言うの?」
計は突然の背後からの挨拶に驚きつつ、反射的に後ろを振り向いた。
「ごめんなさい。おどろかせちゃったわね。私は有栖川 唯って言います。よろしくね!」
「あっ!会 計 と言います。よろしくお願いします。」
「会 計??何だか面白いね!まるで簿記の勉強をするために生まれてきたみたいな名前だねwww」
唯はおどけた表情で冗談を言うとつられて計も笑った。
「確かにそうですね。」
「はい計くん!敬語はやめてね笑」
初対面なのにグイグイ異性から話しかけられてその積極性に計は好感とカルチャーショックを受けた。
「ねぇ計ってテキーラ先生の授業中沢山ノートにメモ取ってるけど凄いね!」
「ありがとう。唯!」
「因みに計は公認会計士の勉強は初めて?」
「そうだね。全くの初学者ではないけど。」
「一応簿記2級と3級は持ってるよ」
「そうなんだ。私はこう見えて日商簿記1級ホルダーだよ。」
「簿記1級?凄い!どうやって合格したの?教えて!」
唯は悪戯っぽく誘うようなお茶目な目つきで微笑む。
「ねえ?立ち話もなんだからマックでお茶しない?」
「OK!行こう!」
計は有栖川が日商簿記1級を持っていることに畏敬の念を禁じ得なかった。そして素直に心から凄いと思った。
”僕も有栖川さんのように簿記が得意になりたい。”
この瞬間から計は秘かに有栖川 唯を目指すべき目標の人に決めた。
二人は九段下のマックの店内に入り計はダブルチーズバーガーセットを、唯はテリヤキバーガーセットを注文した。
それが計と有栖川 唯との運命の出会いだった・・・・




