ある秘かな決意4
大原を出て、白山通りを歩いた。快晴の空が眩しい。
「何か美味いもんでも一緒に食べに行くか?」
ケセラは計の今日の頑張りを労うためにそう提案した。
「ありがとう!」
「よし!じゃあお兄ちゃんについて来なさい。」
二人は駿河台通りのナポリの食堂という大衆イタリアンに入った。
計は中学の時の担任の先生に言われた言葉をふと思い出した。
「Seize the day.今日という日を掴め。今日という日は今日しかないんだ。二度と帰ってこない。」
それならば今日を精一杯懸命に生きていかなければならない。
ナポリの食堂で計は大盛りのカルボナーラを頼み、ケセラはしめじの和風パスタを注文した。
「いただきます!」
二人は大盛りのパスタをモリモリと食べた。
8月の下旬の3日間、灼熱の猛暑の空の下、公認会計士の論文式試験が毎年行われる。日本全国津々浦々の精鋭たちがこの3日間の試験で凌ぎを削り、火花を散らす。
この3日間のために約2年間3000時間以上の勉強時間を注ぎ込んできた者たちの集い。
公認会計士論文式試験とはそういう試験だ。
当然ながら生半可な努力では到底受かりっこない。
何しろこの試験は会計学(財務会計論、管理会計論)、租税法、監査論、企業法、選択科目(経営学、統計学、経済学、民法から1科目を選択する)、の全部で5科目の多科目受験の試験だ。
実はケセラも昔、公認会計士試験に興味が湧いた時期があり、好奇心から地元の図書館で会計士試験について調べたことがある。
だから凄く難しい試験であることはケセラも良く知っている。
中には合格するまで10年以上の年月がかかる人もいる。
10年で合格するならまだマシな方で中には勉強しても一生合格できない人もいる。
だけどケセラは計のポテンシャルの高さも同時に良く理解している。
計ならどれだけ難易度の高い試験でも必ず突破できる。
そう信じている。
しかしこの試験は相対試験でもある。
学習専念生なら毎日10時間以上は勉強しなければならない。
しかもこれはマストであり、言わば最低ラインだ。しかも受験生の中には超ハイスペックな強者もいる。東大、京大出身のエリートだ。
でも大事なのはこういう化け物たちにまともに勝とうなんで思っちゃいけない。というか勝てない。
だけどだからといって合格が決して不可能というわけではない。コツコツと努力を毎日怠らず積み上げて行けばいつの日か必ず道は開ける・・・・
計ならできる。必ず・・・・




