神崎 徹也
そんな9月も半ばに差し掛かり、計は大原で新しい友達を知った。
彼の名前は神崎 徹也。そして後に分かることだがこの神崎くんの存在はその後の計と唯の運命に少なからぬ影響を及ぼすことになろうとはまだ今の計の預かり知るところではなかった・・・・
神崎くんはとても背が高くてミステリアスで妖艶な雰囲気を持つとてもクールな男の子だった。計は神崎くんと知り合ってすぐに打ち解け仲良くなった。唯もすぐに神崎くんに心を開いたようだ。いつしか計と唯と神崎くん~ここからは徹也と呼ぶが~彼らは3人で行動を共にするようになった。
徹也は大原の授業の休憩時間によくメンズノンノやSAFARIなどのファッション雑誌を熱心に読んでいた。
「洋服が大好きなんだね、徹也君。」
唯がいかにも興味ありそうに徹也に話しかける。徹也もまんざらではなさそうな素振りで唯に答える。
「好きだよ!洋服。」
「へえオシャレさんだね。徹也くんは。」
大原の授業を終えてから3人で毎回のようにマックやドトールでお茶をした。徹也はアイスのブラックコーヒーを飲んだ。
徹也は実は恐ろしく優秀だ。実際に大原での答練の成績はいつもトップだった。逆に徹也が成績表のランキング上位に載らないことはまずなかった。甘いマスクに容姿端麗で成績もダントツ。そんな徹也に計は段々と嫉妬するようになっていった。一方でこの頃から唯が明らかに徹也に心惹かれている様子は恋に疎く鈍感な計でもすぐに察した。実際に唯と徹也が徐々に親密に打ち解け互いに接近するようになるのを見ていて計はとても辛かった。
もしかして唯は僕より徹也の方がタイプなのか?そう思うと計の胸はどうにかなってしまいそうな程に苦しく張り裂けそうになった。
そんなある日、計は心に決めた。
「もう一度唯を僕に振り向かせたい。そうだ!今よりもっとがむしゃらに勉強するんだ!徹也よりももっと良い成績を僕が取ったら唯は必ずまた僕を見直してくれる。」
そんな日から、唯を振り向かせたい。ただその一心で計の公認会計士の勉強への熱量はかつてないほど強くなった。自習室でもずっと勉強、家に帰っても勉強、電車での移動中も勉強、夜も勉強、朝も勉強、お風呂でも勉強、トイレでも食事でも勉強、寝ている最中でも勉強している夢をずっと見ていたいと本気で願ったりもした。
部屋で電卓を片手に夜な夜な簿記の勉強をしているとさすがに心配したのかケセラがノックして入ってきた。
「計、勉強も大事だけど、あんまり根詰めすぎるなよ。」
「うん。分かってるよ。お兄ちゃん。」
「そうか。なら良いけどさ。お兄ちゃんもう部屋でレコーディング作業してるからな。計は明日も大原なんだから早く休むんだぞ。」
「分かってる。」
一度崩れたバランスというものはそれが再び平衡状態を取り戻すまでにとても長い時間がかかることがある。恋も。人間関係も。自分自身も。そして勉強も・・・・・・・・・・




