婚約者とデート?
コンコンコン。
休日。
自室のベッドに寝転がって、マンガを読んでいると窓がノックされた。
ここは二階なのだが?
ベランダに続く窓を開けると、メガネの少女が靴を持って入ってきた。
「折本、来た」
「蒔田さん・・・何で、家知ってるんだ・・・っていうか、来るなら玄関から入ってこいよ。誰かに見られたらどうするんだ」
どうやって二階に上がったとか、突っ込みたいことが山ほどあるが・・・。
「んで、何か用か?」
「折本冷たい。婚約した中なのに」
「してない、してない」
あれは勝手に父親が言っていたことだろ?
婚約とも言ってないか。
「婚約者、デートしよう」
「いつまでその設定引きずるつもりなんだ・・・クラスメートなんだし、素直に遊びに行こうって言えばいいんだよ。って何照れてんだ」
蒔田さんは、自分で言ったことに照れているらしい。
恥ずかしいなら言わなければいいのに。
俺たちは、街に出かけた。
明以外で、学校のクラスメートと出掛けるのは初めてだな。
「デートねえ」
「デートといえば、映画館。ちょうど観たいのがある」
蒔田さんは準備万端で来たようだ。
Tシャツの袖を引っ張られる。
「こっち、こっち」
「映画館なんて久しぶりに来たな」
小学生のころ、春休みによく家族で行った思い出がある。
蒔田さんは、珍しく子供みたいにはしゃいでいた。
ポップコーンと飲み物を買って映画を観る。
内容は、いまいちだった。
思っていたよりも人が多くて驚いたけど。
「テレビで人気だって聞いたから観たけど・・・あまり面白くなかった。期待してたのに」
「こういうのは、好みが分かれるからな」
「この後、お茶する。いい?」
「おっ、いいね」
一息ついて、コーヒーが飲みたくなったところだ。
チリン、チリン・・・。
少し懐かしい感じの喫茶店に入る。
昭和レトロってやつだろうか。
「古い感じも悪くない」
「同感だな。どこに座るか」
客層も大人の方々が多い。
少し薄暗くて静かな店内。
店内を見渡すと。
「あ・・・」
「折本?どうした?」
奥の席に、金崎先輩を見つけてしまった。
彼の前には、見目麗しい女性が座っている。
「意外、金崎先輩もこんな所来るんだな」
そういえば、最近彼女と付き合いだしたって言ってたっけ。
二人きりのところを邪魔しちゃ悪い。
俺たちは、先輩たちから離れた窓際の席に座った。
「まあ、何か頼もうか。俺アイスコーヒーで」
「わたしも同じ」
「あの、蒔田さん。さっき、金崎先輩を見て驚いていたようだが、何かあったのか」
「先輩じゃない、先輩の彼女。彼女も同族」
「「えっ?」」
驚いて、思わず大きな声を出してしまった。
まわりの注目を集めたが、先輩には気づかれていなかったようだ。
「お待たせしました」
女性店員が、アイスコーヒーを運んできた。
俺は、アイスコーヒーにシロップを入れストローでかき混ぜる。
「金崎先輩の彼女、古の吸血鬼。あまり良い噂を聞かない・・・苦っ」
「え?あの人吸血鬼なのか?普通の人に見えるが・・・無理すんな。ミルク入れたらいい」
っていうか、先輩は大丈夫だろうか。
血を吸われたりしない?
他にも、吸血鬼がいることに驚きだが。
「わたしも、一応吸血鬼だけど」
「ああ、そうだったな」
不思議と、蒔田さんは怖くないんだよな。
血を吸うイメージがしない。
「吸血鬼といえば、君は血を吸ったりしないのか?」
「数年に一回、献血程度に貰うことはある。気づかないようにする」
「へえーそうなんだ」
「彼女の一族は、魅了で意中の相手を落とす。そうすれば血は吸いたい放題だから」
「食べ放題みたいに言うなよ・・・下手したら死んだりしないか?それ」
「多分、死なない程度。気に入った相手からしか吸わない。不味いのは好まないだろうから」
それ、先輩は大丈夫だろうか。
だが、先輩の彼女が吸血鬼だとして、本当の事を言っても信じてもらえないだろう。
いや、本当に好きになっていたら「血を吸われても構わない」とか言いそうだな。
当人同士が納得していれば、他人がとやかく言うことでもないしな。




