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落とし物

「折本渡って奴、居るか?」


昼休み、教室に見知らぬ男子が訪ねてきた。

上履きに黄色のラインが入っているので、2年生みたいだが。


「俺ですが」


「昨日、妹が世話になった。ぜひお礼をしたいので会ってほしいと言っている」


昨日?

俺が首をかしげていると。


「昨日、駅前の工事現場で少女を助けなかったか?」


「え?」


あの、倒れてた小学生の女の子か。

真奈美かと思って、つい魔法で足を治してしまったんだ。


「これ、君のだろう?」


彼の手には俺の生徒手帳があった。

どこかに落としたと思って、探していたんだ。


「俺は何もしていませんよ。手帳は落としたかもしれませんが」


「まあ、とにかく妹に会ってくれないか?」


あれ?この人見覚えがある気がする。

誰だっけ?


「そういえば、この間ぶつかってすまなかったな」


「金崎先輩?」


数日前は、金色で染まっていた髪が黒くなっている。

服装も以前より落ち着いた感じになって、態度が柔らかくなっていた。

依然と同じ人物とは思えない。

どおりで分からなかったはずだ。


「折本、じろじろ見るな恥ずかしい。オレ様も色々あってな・・・」


金崎先輩は頭を搔いている。


「あっ、失礼しました。先輩も照れるんですね」


「お前、意外と失礼なやつだな」


とにかく怪我をした女子(金崎先輩の妹)に会えばいいらしい。

って、まさか魔法を使ったことがバレているんじゃないだろうな?


「わたる、今の人誰?」


「ああ、金崎先輩だよ」


「「えええっ??」」


明と蒔田さんが驚いている。


「ありえない。金崎先輩はもっとこう、ジャイアンみたいなオラオラってキャラじゃなかったっけ?」


蒔田さんが、とても失礼なことを言っているけど、おおむねその通りだ。


「金髪のチャラ男はいったいどこへいったんだ?」


明も、結構失礼なことを言っているな。


「知らんが、何か心境の変化でもあったんだろ」


「えっ?今の金崎先輩なの??」

「全然、違う!」


他のクラスメートも騒ぎ出した。

それほど衝撃的だったのだろう。



「おう!何か困ったことがあったらいつでもオレ様を頼ってくれよ?」


黒髪にした理由を訊いたら、彼女が出来たらしい。

しかし・・・恋って人を変えるものなんだな。



      *



「おお、こっちだ。こっち」


放課後、近所のファミレスで金崎先輩と妹さんに会うことになった。

明るいところで見ると、真奈美に全然似ていなかった。

真奈美はもっと色白だからな。


妹さんの肌は、日焼けしていて黒い髪でポニーテール。

TシャツにGパンをはいている活発そうな子だ。

お兄さんが、金髪だったからって妹も同じとは限らないもんな。


「はじめまして、折本です。生徒手帳拾ってくれてありがとう。落としたの全然気が付かなかった」


「はじめまして。金崎あかりです。折本さんのおかげで、痛かった足がすうっと痛みが引いて・・・足が治ったんです。病院のお医者さんに言っても誰も信じてもらえなくて」


事故の時、怪我が酷かった右足。

とっさに魔法をかけてしまった。

意識がないと思っていたが、もしかして見えていたのか?


「・・・いや、俺は何もしていませんよ?」


嘘をつくのは苦手だ。

首を振り、無理に笑顔を作ってみせる。


「折本・・・妹は決して嘘は言わない子だ。折本には、何か言いたくないことがあるのか?今日は何かおごらせてくれ」


何とか誤魔化せると思ったが、これは後で理由を言わないとダメかもしれない。

ファミレスで夕飯をご馳走になっていたら、帰りが遅くなってしまった。

真奈美に連絡しなかったから、怒られるかもしれないな。

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