美女と野獣
*** 金崎透 視点
今から数日前。
オレ様が学校の廊下を歩いている時の事だ。
ドン!
「痛えな。ボーっと突っ立ってんじゃねえぞ」
スマホを見ながら廊下を歩いていたら、人にぶつかった。
「あっ、悪い。直ぐにどくわ」
ぶつかった相手は、身長が170センチくらいで真面目そうな男。
地味な見た目で、一見弱そうだ。
隣は、髪が短く胸が平らな女。
オレ様の好みではないな。
「まいっか。次からは気をつけろよ?」
普段のオレ様なら、威張り散らしているところだ。
機嫌が良かったので何事もなく通り過ぎる。
今日は、最近仲良くなった女子と夕方会う約束をしているのだ。
彼女は女子高に通うお嬢様だ。
*
カランカラン。
今時にしては珍しい古風な喫茶店。
いわゆる昭和レトロっていうやつだ。
彼女はこういった店が好きらしい。
「お待たせ。遅くなってすまない」
「いいえ。全然待ってないから大丈夫ですわ」
ふわりと優しく笑顔を向ける彼女。
今までオレ様の周りにいなかったタイプだ。
「オレは、アイスコーヒー、ひとつ」
「わたくしはミルクティーで」
「かしこまりました」
「しかし・・・オレ様みたいなのと相手をしていいのか?自分で言うのもなんだが金髪で風紀的に悪いだろ?」
アイスコーヒーを飲みながら、上野さんと話す。
上野さんはクスリと微笑んだ。
「人は外見で判断するものじゃありませんわ。金崎さんは、わたくしが困ったところを助けてくれたじゃありませんか」
そう。
オレ様は、彼女が男たちに絡まれていたところを助けた。
突っ込んでいったら、男たちが逃げ出したのでケンカにはならなかったが。
「上野さん。オレ様はそんな大層な人間じゃない」
「天音と呼んでくださいな。そのかわり、わたくしも透さんと呼んでもよろしくて?」
「お、オレで良ければ・・・って名前で呼んでもいいのか?」
上野天音。
地元で有名な偏差値の高い女子高校に通うお嬢様。
黒髪は天使の輪のように輝いていて、肌も透き通るように白く・・・まるでどこかのお姫様のような雰囲気すらある。
オレ様ですら、怖気づいてしまうくらいに。
「えっ?」
オレ様の右手を、彼女の両手が包み込む。
「わたくし、男性にこんな気持ちを持つのは初めてですの。透さんよろしければ、またお会いしてくださいますか?」
頬を染め、うるんだ瞳でオレを見つめる天音。
天音はオレの事が好きなのか?
「も、もちろんだとも!いつだって会いに行ってやるさ!」
心臓がバクバク騒いでいる。
人生、何が起こるか分かったものじゃないな。
オレ様の人生はバラ色だ。
*
「♪~~」
「お坊ちゃま、随分機嫌が良いみたいですね」
屋敷に帰ると執事が声を掛けてきた。
「まあ、な。じい、それよりこの髪どう思う?」
オレ様はこの色が気に入っているのだが、天音さんはどう思っているのだろう。
真面目そうだから、本当は黒髪のほうがいいと思っているんじゃないか。
「率直に申し上げますと・・・お坊ちゃまはまだ学生なので黒髪がよろしいのではないかと・・・」
「やっぱりそうか。じゃあ、髪色を戻すことにする」
「へえっ?」
執事が凄く驚いた顔をしてるな。
そんな変な事を言ったかな?
「オレ様が、黒髪にするのは変なことか?」
「め、めっそうもございません!では、早速美容師を手配いたしましょう」
「ああ、頼む」
その後、泣きながらじいがどこかへ電話していた。
どうやら、親父に報告をしていたらしい。
次の日学校に登校すると、周りが驚いているのがとても不思議だった。
オレ様は、そんなに変なことをしただろうか?
だが、そんな事は全く気にならなくてワクワクしている。
早く天音に会いたい。
髪色が変わったオレ様を見て、きっと喜んでくれるだろう。




