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勉強とお屋敷

カツカツカツ。

教師が、黒板に白いチョークで書いている。


授業内容が全く理解できない。

以前はそんな事なかったのだが。


「・・・とにかく、ノートに書き写すか」


俺はバカになってしまったのか?

中学とは違い、高校は赤点を取ると進級できない。

留年は勘弁したい。


「わたる、どうしたの?真っ青な顔して」


「もうすぐテストあるよな?俺、赤点かも・・・」


「ぼくと一緒に勉強する?よければ教えるけど」


「えっ?いいのか?でも、明自身の勉強もあるだろ?」


「別に気にしないでいいよ。ぼくの復習にもなるし」




放課後。

急遽、図書室で明と勉強をすることになった。

テーブルで教科書を広げて・・・さてどこからどうしたものか。


忘れたのが、数日の記憶ならまだいいのだが。

中学の勉強まで忘れているとなるとかなりやばい。

真剣に考えこんでいると、頭上から声を掛けられた。


「折本?」


「びっくりした。何だ、蒔田さんか。ってどうしてここに・・・」


「わたし、図書委員。委員じゃなくてもいつもいるけど」


蒔田さんは本が好きだから、図書室にいるのか。

今も手に何冊か本を持っている。

昨日持っていたのと違う本を持っているな。


「ぼくもいるよ?」


「気づかなかった」


あれ、何か睨み合ってるんだけど?

昨日仲良くなったんじゃなかったのか。


「勉強してるの?折本、確か成績良かったはず」


うん。

俺は自慢じゃないが、成績はクラスでも前の方だったよ。

だけど、異世界へ行っている間に勉強内容を忘れたらしい。

その代わり、魔法とかは憶えたんだけどね。


「異世界に勉強したこと置いてきたんだって」


「そっか。なら仕方ない」


【折本、記憶戻す薬あるけど使う?】


突然、頭に声が聞こえた。

蒔田さんの声だ。

吸血鬼だけあって、色々能力があるのだろうか。


【欲しかったら、家付いてきて】


有無を言わさず一方的に話し続けてきた。

俺OKとか言ってないからな?


明と、図書室で1時間ほど勉強をした。



      *



一緒に帰ろうと明に誘われたが、街で買い物があるからと言って別れた。

正直に、蒔田さんの家に行くと言っても良かったのだが。


今、蒔田さんと一緒に歩いている。

知らない道を歩くのは新鮮で楽しい。


「あの・・・俺、薬欲しいって言ってないけど?」


「試しに飲んでみるのもいい」


「・・・なあ、それって危なくないのか?」


「うちの秘薬。多分、数年の記憶が消えるけど問題ない。ちょうど治験者が欲しいっていってた」


「怖っ!」


だめだろ。

数年って、俺が魔法を習得した記憶も消えるじゃないか?


「やっぱいいや。忘れると魔法使えなくなる」


「あ、そっか。何で飲んだのか忘れちゃうとまずい・・・わたしが最初から説明しないといけない」


飲んで忘れたら、吸血鬼云々も忘れるだろう。

いや、転移前に戻るのならいいのか?

いやいや、やっぱりだめだ。


身長が伸びて体つきが変わり、制服もサイズが合わなくてきつくなっている。

記憶だけ消えたら、今の姿に怖くなるに違いない。


「よけいなお世話?」


「一応、気遣ってくれたんだろ。ありがとな」


「あ、ここわたしの家。寄ってく?」


話しながら歩いていたら、大きなお屋敷の前まで来た。


「いいよ。悪いし」


「昨日お邪魔した。お茶だけでも」


大きな門の前で立ち止まっていたら、勝手に門が開いた。


「「おかえりなさいませ。お嬢様」」


「ただいま。友達連れてきた」


「はい、かしこまりました。準備いたしますね」


制服姿の人たちが、横に並んで頭を下げている。

まるで、どこかの旅館みたいだ。


「てっきり、西洋の洋館みたいな家かと思った(吸血鬼だし)」


時代劇に出てきそうな純和風の屋敷だ。


「テレビアニメの見過ぎ」


現実はそういうものか。

まあ、金持ちなのは間違いないだろう。


広い玄関を入り、長い廊下を歩いて行くと居間に通された。




「話は聞いているよ。君が折本くんだね?」


居間に入ると、眉が太く口ひげを生やしたダンディな中年男性が座椅子に座っていた。

蒔田さんの父親なのだろうか。

お茶を飲んだら、直ぐに帰るつもりだったのに。


すでに、テーブルには和菓子とお茶が出されている。


「どうだろう。うちのかえでと一緒になってみては」


「えっ?」


かえでって誰ですか?

蒔田さんが、目をまん丸くしている。

っと自己紹介がまだだった。


「あ、あの。初めまして蒔田さんのクラスメートの折本渡です」


「失礼した。ワシは蒔田重蔵。かえでの父親だ」


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