異世界のこと
「蒔田さんと、どこ行ってたの?」
こっそりと後ろから教室に入ると、隣の席の明に問いだたされる。
異世界の話は、改めてすることになった。
今は、授業中だからな。
「・・・屋上。まあ、ちょっと・・・悩み事を相談されたんだ」
「わたるに相談?」
明は眉間にしわを寄せている。
疑われているな。
俺は昔から嘘をつくのが得意じゃないが、これで押し通すことにした。
*
放課後。
下校しようとしていたら、蒔田さんに捕まってしまった。
腕を離してくれない。
まぁ、悪い気はしないけど。
「異世界の話聞きたい・・・」
「そうだ。ぼく、わたるに訊きたいことあるんだよね。何か隠していることあるでしょ・・・ついでに蒔田さんの悩みも聞けばいいじゃない。ぼくでも相談のれるかもしれないし」
「ついでって・・・蒔田さんに失礼だろうが」
「わたしの悩み?」
「あれ、違ったの?」
「わ、分かったよ」
教室から、女子二人と並んで歩く。
道行く人が、ジロジロと俺たちを見てる。
何だか目立ってるな。
あ、蒔田さんが腕に絡みついているからか。
両親は共働きで、帰りは19時過ぎだ。
俺たちが帰るころにはまだ帰っていない。
「ただいま」
「「お邪魔します」」
「おかえりー。えっ?お兄が、女子二人連れて帰ってきた??大変!お母さんにラインしないと」
「せんでいい」
「あらいやだ。お茶菓子ない。お二人とも冷たいお茶でいいですか?」
真奈美は、冷蔵庫から冷たいお茶を出しコップに注いでいる。
俺たちは、リビングに移動し横に長いソファに座る。
俺の左隣には明、右隣には蒔田さん。
真奈美は、少し離れた台所の椅子に座っている。
「そういえばさ、今朝お兄変だったよね・・・」
コップのお茶を飲む。
異世界の服で、ベッドに寝ていた俺。
今朝の自分の様子を思い出す。
「えーとそれはだな・・・」
「ぼくも、今朝のわたる・・・いや、昨日と今日のわたるが変わりすぎてどう説明したらいいのやら・・・教室の場所も、忘れてたし・・・でも普通忘れないよね?」
「えっと俺、今朝異世界から帰ってきた・・・」
「「はい?」」
明と真奈美の声がかさなった。
「お兄?」
「わたる、とうとう頭おかしくなった?」
「うん、それで?」
「あれ?何で蒔田さんすんなり受け入れてるの。おかしいでしょあれ」
「折本、早く続き聞きたい」
「異世界って言うけどさ・・・お兄ずっと家にいたよね。いつ外出した?」
「外出してないぞ。部屋で寝てたら突然異世界へ転移して、帰ってきた時も寝てた時だったから」
「「「????」」」
「お兄、マンガの読みすぎで変になったわけじゃないよね?」
「続き・・・」
「何で、蒔田さん疑ってないの」
「だって、きゅ・・・。折本、魔法使える。嘘ついてない」
今、自分で吸血鬼って言おうとしたな?
慌てて引っ込めたみたいだけど。
「「魔法??」」
「分かった。じゃあ、今から魔法を見せるよ」
室内で使う魔法。
あれでいいか。
『水魔法』
水魔法の呪文を唱える。
すると、野球ボール大の水の塊が空中に出現した。
ふわふわと浮いている。
本来の呪文はもっと長いらしいが、俺はイメージすると不思議と使えるので長い言葉を発しなくても済む。
「おおっ、これが魔法!」
蒔田さんは初めて見る魔法に感激している。
明と真奈美はお互いの頬をつねったりしている。
どうやら、やっと信じてもらえたらしい。
俺は転移した異世界の話をした。
文明がこちらの世界より遅れていること、そのかわり魔法という不思議な力をみな使っていること。
魔力は、貴族とか平民とか関係なく持っていて生活の一部となっていた。
俺は運よく、近くの農村にお世話になり冒険者として働き始めたところだったのだが。
今頃、あっちでは俺が居なくなったから心配しているのだろうか?
考えても仕方のないことだけど。




