クラスメートの正体
「1年3組、この教室だよ」
俺は、幼馴染の明に教室を教えてもらっていた。
「あ、そうだった。そうだった」
「でも教室を忘れるなんて・・・変な病気じゃないよね?」
今朝、異世界から帰ってきた俺。
4年ぶりに日本に帰ってきたわけだけど。
学校の教室の場所を全然憶えてなかった。
せめて、学校に一か月くらい通っていれば憶えていたのだろうけど。
高校の入学式から数日後に異世界転移してしまったのだ。
授業前の廊下には生徒が数人いて、立ち話をしている。
ドン!
教室の入り口近くに立っていたら、人にぶつかってしまった。
日本に帰ってきて、危険がないとはいえ少し油断しすぎたな。
「痛えな。ボーっと突っ立ってんじゃねえぞ」
「あっ、悪い。直ぐにどくわ」
ガラの悪そうな金髪の少年に睨まれる。
金のネックレスをして、耳にピアスを付け制服を着崩している。
派手な格好をしていて、先生に怒られないのだろうか?
「ま、いっか。オレ様は機嫌がいい。次からは気をつけろよ?」
金髪少年はにやついて、通り過ぎていった。
見ると、少年が通る道は人が避けている。
周りの人は怖がっているみたいだ。
「今の、何だか偉そうなやつだな」
「ちょっと!金崎先輩って直ぐに暴力を振るうことで有名なんだよ?っていうか、わたる怖くないの?」
思い出した。
金髪少年の名前は金崎透。
一つ上の先輩だ。
中学の頃から、地元では有名で悪い連中とつるんでいるとかなんとか。
・・・やたらと悪い噂が多い奴だ。
まあ、あくまで噂なのだが。
怖いかって聞かれると怖くない。
だって、見るからに弱そうだ。
屈強な異世界の冒険者たちとつい比べてしまう。
「ほんと、金崎先輩。今朝は機嫌が良かったのかな?」
教室の椅子に座っている、黒縁メガネの少女が声を掛けてきた。
えっと、この人は誰だっけ?
サラサラした漆黒の髪は後ろに結われていて、黒縁メガネが真面目そうな印象。
俺の視線に、少女は眉間にしわを寄せている。
「折本くん、この人誰だっけって顔してる。わたしでも地味に傷つく・・・」
「わたる、蒔田さんも忘れちゃったのか・・・病院に行ったほうがいいんじゃないかな。まあ、とりあえず教室入りなよ」
メガネの少女は蒔田さんというらしい。
明は呆れている。
仕方ないだろ、4年ぶりなんだから。
何て言えるはずもなく。
少女が持っているのはラノベ小説。
思い出した。
そういえばいつも教室で本を読んでいる人いたわ。
「ん?」
何だか妙な気配するんだけど。
ここに魔物はいないはずなんだけどなぁ。
目の前にいるのは、可愛らしい女子高生。
『鑑定』
俺は蒔田さんを鑑定した。
妙な予感がするのだ。
こういう時は割とあたるんだよね。
「・・・吸血鬼?」
驚いて、思わず口に出してしまった。
「は?」
蒔田さんは、俺を見て目をぱちくりさせている。
「折本、ちょっと来て」
俺は、彼女に手を引っ張られ廊下に出た。
「どこ行くんだ。これから、授業始まるぞ?」
「まあ、いいから」
強い力で引っ張られ、階段を上へ登っていく。
女子ってこんなに力強かったっけ?
*
生徒たちが教室にいる中、俺たちは学校の屋上に来ていた。
これから授業が始まるので、ほかの生徒はいない。
空は快晴で、日差しがぽかぽかと暖かい。
キーンコーン・・・
始業のチャイムが鳴った。
「・・・・・」
「蒔田さん?」
「・・・折本、わたしが吸血鬼だってことどうして分かった?バレるようなヘマはしていないはず」
それは、俺が鑑定魔法を使ったからだ。
魔法の事は、誤魔化そうと思っていたが、彼女の真剣な表情に・・・俺は頭を搔いた。
「あー俺、異世界に行っていて魔法を使えるようになったんだ。それで、鑑定魔法というのがあって、見えたから?」
「魔法?」
あれ、信じてもらえなかったか?
蒔田さんの手が小刻みに震えている。
まあ信じろっていうのが無理な話なんだけど。
「マジか?異世界行ったって・・・」
俺の両手をぎゅっと握られた。
って、痛いんですけど?
「痛っ!蒔田さん、力強すぎ」
「わ、悪い。吸血鬼は身体能力が高くて腕力も強い・・・普段はセーブしている。えっと、あの・・・異世界の話訊きたい。それと、わたしの正体は黙っていてくれると助かる」
そういえば、蒔田さんって異世界もの大好きなんだっけ。
色々思い出してきたよ。




