献血?
気持ちのいい初夏だ。
校庭に植えられた桜の樹は青々繁っている。
午後の体育。
校庭で、男子はサッカー、女子はバレーボールをしていた。
バタン!
「「きゃー--」」
女子の悲鳴が上がる。
「えっ?ちょっと、大丈夫??」
女子たちが騒がしくなり、人が集まっていた。
何かあったのか?
「「蒔田さん!」」
誰かが彼女の名を呼ぶ。
確か、吸血鬼って日の光が弱点じゃなかったか?
「折本どこへ行くんだ?」
「悪い、ちょっと抜ける」
急がないと不味いかもしれない。
俺は慌てて、蒔田さんのもとへ駆けて行った。
*
「蒔田。大丈夫か?」
「・・・うん。運んでくれてありがとう」
俺は、蒔田さんを抱きかかえ保健室へ連れて行った。
保健室のベッドに寝てもらう。
顔が青白く、大分体調が悪そうだ。
「今日は天気が良くて暑かったし、体育の授業出ないほうが良かったんじゃないか?」
「太陽は平気。ちょっと、貧血だっただけ」
「貧血?きゅう・・・が?」
思わず吸血鬼と言いかけて止める。
保健室を見渡すと、養護教諭も留守で俺たちの他に人はいないようだ。
俺は、折り畳みの椅子に座った。
「たまには、血を飲まないといけない。だけど、好みが変わって動物の血が飲めなくなって・・・不味いとは思ってた」
「そりゃ・・・」
普段は動物の血を飲んでいるのか。
「人間の血なら飲めると思う・・・折本、少し血を分けてほしい。お願い!献血だと思って」
蒔田に、必死にお願いされる。
「・・・別に構わない」
「本当?ありがとう」
蒔田さんは、俺の首元に軽くキスをして血を吸い始めた。
何だかこそばゆい。
「ちゅーちゅーちゅーちゅー・・・」
少しと言っていたはずが、だいぶ吸われている気がするな。
「・・・おい」
「ごめん。美味しすぎて飲みすぎちゃった」
血を飲んだおかげか、青白かった顔がピンク色に染まっていた。
蒔田さんの目がトロンとしている。
「・・・きな人の血は甘くて美味」
「・・・え?今何て言った?頭がぼーっとしてて聞こえなかったんだが」
ぼーっとして、少し目が回るな。
血を吸われて、俺が貧血になったらどうしようもないんだが。
『回復魔法』
俺は自分自信に回復魔法を掛ける。
一時しのぎだが、何とかなるだろう。
後でレバーとか食っとかないと。
「顔色もいいし、もう大丈夫みたいだな。また困ったら俺の血吸っていいから。だが、念のため少し休んどけよ?」
「・・・うん。ありがとう」
教室へ戻ると、クラスメートたちに揶揄われた。
・・・横抱き(お姫様抱っこ)が不味かったらしい。
他意はないんだが。
噛まれた首元に手を当てる。
回復魔法で、傷は跡形もなく消えているのだけど。
こそばゆくて、妙な感覚がした。
*
次の日、学校の昇降口で蒔田さんに会った。
「蒔田さん、おはよう」
「折本おはよう。昨日はありがとう。えっと、一緒に教室まで行かない?」
「おう」
俺は上履きを履いて、蒔田さんと一緒に歩く。
「昨日、吸いすぎたけど平気だった?」
「まあ、普段から鍛えているからな。大丈夫だ」
まあ、家に帰って血になりそうなものを沢山食べたんだが。
しばらくレバーは見たくないかもしれない。
廊下の窓から風が流れる。
蒔田さんの黒髪がふわっとなびく。
ほのかにフローラルな香り。
「わたるー、蒔田さんおはよー」
後ろから、明が慌てて走ってきた。
そんなに、急がなくても良いと思うが。
「蒔田さん、昨日は大変だったね。もう体調は大丈夫なの?」
「うん。休んだからもうすっかり平気」
「いいな・・・ぼくも、お姫様抱っこしてもらいたかったな」
明が慌てて、手で口をふさいだ。
顔が赤くなっている。
「い、今のは例えだからさ・・・ぼくがわたるにして欲しいとか言ってないから。用があるから先に行ってるね」
「・・・そういえば、今日も勉強する?」
ああ、もうすぐ中間テストだっけ。
すっかり、忘れていたよ。




