恩人
誰かにつけられている。
相手は多分、明と金崎先輩。
バレないとでも思っているのだろうか。
後ろを気にしていたら、金崎さんに声を掛けられた。
「折本さん、どうしましたか?」
「ああ、何でもないよ、とりあえずベンチに座ろうか」
休みの日の公園は、とても静かで子供の姿がみえない。
さて、金崎さんの行きたいところを聞くとするか。
「あのー折本さんは、異世界帰りの勇者様ですか?」
「ぶっ!ゲホゲホ・・・」
いきなり何を言い出すんだ?
異世界から帰ってきたのは間違ってないが。
「金崎さんは、随分ロマンチックなんだな。俺の知り合いにもラノベが好きな人がいてさ。そういえば、最近アニメも多い・・・」
「誤魔化さなくていいです。実は知り合いに魔法が使える人がいて、その人も異世界から戻ってきたって言ってました」
「そうなんだ?金崎さんは小学六年生だっけ。まさか、その知り合いって・・・折本真奈美?」
「真奈美ちゃんは友達です!」
真奈美、喋ってやがる・・・。
言うなとは言ってなかったけど!
世の中狭い、狭すぎるよ!
「あー俺、真奈美の兄なんだよ。その話は俺の事で間違いないけど、勇者じゃないよ」
「そうなんですか?てっきり勇者さまかと思いました!」
異世界ものが大好きなんだな。
気持ちは分かるけど。
俺も異世界転移する前は憧れたからな。
「最近はまっているのは聖女さまですかね。折本さんは何か好きなジャンルはありますか?」
どうやら、好きなマンガやアニメの話がしばらく続きそうだ。
*** 金崎 透 視点
「随分、仲良さそうだな。おい・・・」
あかりが、嬉しそうに折本と喋っていて折本もニコニコとしている。
複雑な心境だ。
「ぼくが偶然を装って、邪魔してきましょうか?」
オレ様以上に頭に血がのぼっている奴がいた。
おかげで少し冷静になれる。
「デートを邪魔するバカがどこにいる(邪魔したいのはやまやまだが、後であかりに怒られるからな)・・・ただ談笑しているだけだ。だが、あいつらに共通の話題なんてあったか?」
高校生と小学生。
歳が離れすぎている。
マンガやアニメの話をしているのだろうか?
あかりは異世界ものが好きらしいからな。
「っ!わたるが、妹さんの手を触ろうとしている。もう我慢できない!」
「ちょっと待て!」
止める間もなく、野口が二人の前に飛び出して行ってしまった。
あー。
オレ様のせいじゃないからな?
*** 折本 渡 視点
「あたしにも魔法使えるかな?」
「さあ、どうだろう」
金崎さんが、魔法を使ってみたいというので手に触れようとしたら、明が茂みから出てきた。
髪に葉っぱが付いている。
「ちょっと!わたる。いたいけな少女になにやってんの?警察に通報するよ?」
「え?」
俺、何もやってないけど?
っていうか、明の目がマジだ。
スマホを取り出し、おもむろに番号を押し始める。
「ちょっと、明、落ち着け」
俺は明の手を取って、スマホを引き離した。
「わたる、返してよ!なにするんだ」
「つうか、明何でここにいるんだ?まさか俺たちをつけてきたのか?」
「・・・っ!そ、それは・・・」
「折本、すまない。妹が心配で、オレ様と一緒につけてきたんだ。だから叱らないでやってくれ」
続けて茂みから、金崎先輩が出てきた。
まあ、最初から知っていたが。
「それよりお兄ちゃん、凄いの!!折本さんが、異世界から帰ってきた人なんだって!」
「まさか、折本が?にわかには信じられんが・・・」
金崎さんが嬉しそうに、金崎先輩に話している。
どうやら異世界の話は金崎先輩にも伝わっていたようだった。
こうやって、秘密は秘密じゃなくなっていくんだな。
「あの・・・このことは二人だけの秘密でお願いします」
俺は、あかりちゃんを回復魔法で治癒させたことを正直に話した。
「やっぱり、あの時魔法で足を治してくれていたんですね!痛みが急になくなったのでびっくりしました」
デートは中止になり、四人で近所にあるカラオケ店に行くことにした。
二人きりのデートじゃなくなったのは申し訳なかったが。
みんなで、楽しい時間を過ごせたのだから良かったのだろう。




