1:本当に俺は大丈夫なのだろうか?
アレス。アレス・ハーダウェイ。
それが今世での俺の名前。
両親は農業をしていて、なかなかの美男美女カップル。
おかげで、俺も前世よりも多少マシな顔で生まれたようだ。
ま、外見なんてどうでもいいけどね。
農業と言っても、両親はそれなりに広い土地を持ち、何人かの従業員を雇っているため、生活はそれなりに潤っている。
貴族などに比べれば、財産はないに等しいが、庶民から見たら上の方。
貴族と言ったが、どうやらここは地球で言うところの中世の世界観だ。
俺が色々見て感じたのは、この世界には魔法があるせいで、テクノロジーの発達が遅れ、中世で時代が止まっている。といった感じだ。
ちなみに俺は今14歳。明日には15歳になる。
これまでの人生を簡単に説明すれば、順風満帆だった。
神の思し召しか、俺は前世の記憶を引き継いで生まれてきた。
それは、知識の面でも有利だが、肉体、つまり身体操作の面でも記憶を引き継いだようで、幼い頃から、頭の良さだけでなく、剣術などにも才能を見出された。
そのため、近所でも評判の神童と呼ばれ、街を歩けば様々な人から声をかけられる。ちょっとした街の有名人だ。
少し前に両親から聞いた。
どうやら街の人々は、明日の成人の儀で、俺がどんなタレントを授かるのかが話題になっているという。
神様との話し合いのときに俺がスキルと言っていたものは、この世界ではタレントと呼ばれるようだ。
そして、このタレントによって覚えられるスキルが違い、さらにスキルからアビリティが覚えられると言った具合だ。
たとえば「魔法使い」というタレントを持っているなら、そこから「火の魔法」「風の魔法」と言ったスキルが覚えられ、火の魔法から「ファイアーボール」などのアビリティが覚えられる。このような3層構造になっている。
そして、15歳の誕生日になると教会でタレントの鑑定が行われ、ここから初めて各々スキル習得が可能になる。というわけだ。
「いよいよアレスも成人の儀だな。知勇に優れた子どもがどんなタレントを授かるのか、他人の子どもながらワクワクするよ」
「きっと見たこともないタレントなんじゃないか?」
そんなことを話していたぞ。と、父は嬉しそうに報告してくれたが、残念ながら俺はもう自分のタレントを知っている。
あの神様から授かった「成し遂げた者」だ。
神様は落胆していたようだが、ま、今のところ今世は絶賛無双中だ。
素の能力で、どうにでもなるだろう。
……そんなことを思っていた時期が俺にもありました。
15歳の誕生日のスキル鑑定。
結果はやはり「成し遂げた者」
見たこともないスキルに、街の人たちは大はしゃぎ。どんなスキルかはわからないが、とにかくスゴいに決まっている!
そんな街の期待を一心に背負い、俺は街を出て王都の学校に通うことと成った。
そして……。
……バフが切れました。
俺が15歳まで調子に乗れたのは、あくまで前世の記憶があったから。
15歳ともなると、勉強してきた人間は俺より知識を持っているし、鍛えてきた人間は俺より強い肉体を持っている。
入学当初こそ、自信満々の振る舞いが功を奏して、一目置かれはしていたが、そのメッキは半年も経たない内に剥がれ落ちてしまった。
そして、今の俺はこんな感じ。
教室の一番うしろの端に座り、誰にも話しかけられない日々。
クラスで班決めなどがあれば、クラス内で俺の押し付け合いが始まる。
王都のエリート校なので、生徒は皆向上心に溢れ、他者を構うより自分の鍛錬に身を置く校風も相まって、いじめられてこそいなかったが、普段は無視され、班単位での行動のときには、お荷物扱いされる。
それが今の俺だ。
思えば、前世の高校時代は便所飯だったな。このときも空気だったが、ただ、これは俺が望んでいたことだ。
ゲームボーイを相棒に、トイレ休憩を満喫していたものだ。
それが今世では、望んでいないのに空気だ。
本当に俺は大丈夫なのだろうか?




