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漆黒のファースト ~First of The black onyx~  作者: うーCHAN
第5章 二日目 <夕刻>
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へーんしん!

 話を聞くに、もしかしてタスクは獣人族とは可也違う生態の種族なのかなと推察するとクラウディアが質問を重ねた。


「幼い頃から変身してた?」

「多分。だから能力をコントロールする為に、色々訓練させられた。僅かに誰かの腕を握っただけで、握り潰した時期もあったし。」

「それは強力だ。」


「でも埒が明かなくて、その内育ての親セリムに貰った魔道具で俺の能力を封印するようになって。これが一種の封印になっているんだ。ひどく感情的になると効き目が悪くなるけど。」

 髪をかきあげて耳を見せるタスク。


 耳には例のイヤーカフスがついている。

 これのせいで普段は抑制しているが、感情の昂ぶり次第で姿が変わってしまうとタスクは補足した。


 クラウディアはその耳を暫く眺めていると、指先でイヤーカフスに触れた。

「ふうん。微量だが魔力は感じるね。」

「魔力の違いとか解るんだ?」

「うん。言わば変身能力も魔力を使っている所があるからね。」


 そう言って少し一息入れて考えるクラウディア。


「そうか…と言うことは、タスクは人型でも能力の変化は余り無いのかな?」

「なんだそれ?」

「私達獣人族は人型より変身した方が能力が開放される。多分今の私より10倍以上強くなると言うか。」

「ああ…そう言われると俺の場合は余り変化無いのかな。」


「タスクの育ての親と言う人は君とは違う種族なのか?」

「セリムは魔術師だけど普通の人間だよ。」

「…セリムって何処かで聞いたな?千里眼のガトーの師匠だったか?」

「それ前にも言われたな、俺セリムが魔術師以外は知らないんだ。」


 頭を振るタスクにクラウディアは素朴な疑問をぶつける。

「君は自分の出生を知りたくは無いのか?」

「あんまり興味無かった。セリムはいつも話が長かったし。あいつ理屈屋で説明が下手なんだ。」


 おかしな所で子供ぶりを発揮するタスクに不思議と笑いがこみ上げて来る。

「ふふ。」


 クラウディアは座り直し思索する表情を見せた。

 この少年はほとんど何も知らないようだ。


 育ての親は知らないまま大人になる彼を心配しなかったのだろうか?

 その内彼も本当の意味で大きくなるだろう。

 成人して一人の男として自身を振り返れば、何故育ての親から全て聞き出さなかったのかとタスクは思うだろうし、育ての親もそうなる前に何か残すのでは無いだろうか。


 タスクがクラウディアの思索に補足するように話かける。

「セリムは死ぬ前、もっと大きくなってから色々話すつもりだったがこんなに早く死ぬのならもっと前から色々話せば良かったって言ってた。」


「…そうか。」


 会話が止まったのでクラウディアも身の上話を始める。

「私達獣人族は生まれた南大陸を出て出稼ぎに行く。」

「へえ、自国じゃ稼ぎにくいのか?」

「モンスターだけはウヨウヨいるけど砂漠も多いし本当に何も無い国だからね。」

「ふうん。」


「繁殖期になると帰国するんだが、そのまま旅先で子作りする場合も少なく無い。」

「他国で仲間を見つけた場合もあるからか?」

「同族に惹かれはするけど…なんて言うのかな?気に入った異性が別種の生き物ならそれはそれじゃない?」


「結構アバウトだな。」

「王族なら純血種を望むかも知れないけど。」

 クラウディアは肩を竦めて木にもたれ掛る。


 それから子供が出来たらその地に留まって産み落とすか、帰国して産み落とすか決める。

 狼の獣人族であるクラウディアは群れを大事にし伴侶を大事にする。伴侶を連れて帰れないなら子供を生む時は帰国しない。

 南大陸で子育てするのが一番伸び伸び育つらしいが、そこじゃなければ育たない訳でも無いそうだ。


 考え方や臨機応変を目指すと色々な育成方法が出来上がるらしい。

 獣人族の個性をクラウディアは教えてくれた。


「子供か…俺子供作れるようになるのかな。」

 クラウディアの話を加味したタスクが思ったままを口にする。

「…つまり?」


「俺、身体だけは一端にデカくなるから、皆戸惑うんだよ。今より老けたらマズイな。見た目おっさんなのに子作りできません。とかウケるよな。」

 クラウディアもさぞ戸惑った事だろうとタスクは言いたかったようだ。


 笑って話すタスクに少し憂いを感じる。

 早く大人になりたくても子供である事がどうにももどかしいようだ。

 また子供なのだから仕方が無いと言う気持ちもある。

 天秤が常にどちらかに傾くような毎日を送っているのが現状なのかも知れない。


 いつまでも子供ではなく思春期を迎えているから起こるタスクの迷いをクラウディアは笑うでもなくただ頷いて受け止めた。


「大人は子供に戻りたくても戻れないのだから、タスクは今を愉しむべきだと思うよ。」

 クラウディアがタスクの頭にもたれてそう慰める。


「…あんた大人だな。」

 焦らなくてもいつか大人になる日が来る。

 そう慰められたと気付きタスクは素直に褒めた。


「そうかな?ねえタスク、お礼のやり直しをしようか。」

「やり直しなんて…もう十分貰ったよ。」


「そう言わず。さっきのは忘れてお互いやり直そう。」

「…どうするんだ?」

「目を閉じて。」


 言われるままタスクは黙って目を閉じた。

 そうすると長い睫が揺れる。

 17~8歳かと思える顔立ちなれど、頬の微かな脹らみで何処かあどけなさが残るせいか14~5歳位に見える。

 しかし実質は10歳だと言うのだから反則のような容姿だ。

 彫りの深い顔立ちを真正面から捉えると、クラウディアは少年の前髪をかきあげた。


 前かがみになると、全てボタンを閉じていないアールから拝借した上着からクラウディアの胸の谷間が垣間見える。

 目を閉じているタスクには窺い知れないが、胸元には彼女が獣人族である証が覗いていた。


 クラウディアはそのままの姿勢で少年に顔を近付けると、形の良い額に柔らかな唇を添えた。

ここで一旦区切ります。

再開致しましたら、また読んで頂けましたら幸いです。

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