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漆黒のファースト ~First of The black onyx~  作者: うーCHAN
第3章 二日目 <午後>
39/67

038

モンスターをいくつかに?

 地下から出たアールは、部下の報告を聞いていた。

 森にギルドの戦士達が集まっていると聞き、すぐ向かう準備をする。


 ラファエレを一緒に連れて行くか逡巡していた所で、二人の説明を聞いたアールは、一旦ラファエレを屋敷に戻すと決めた。

 ルーン文字から離れがたいのか、ここで一晩明かしたいと懇願するラファエレを無理矢理地下から一苦労で引っ張り上げた。


 司書官を増員して書き写した残りの文章は追って届けさせるからと説得しても首を縦に振らない為、結局、梯子に魔術師見習いをくくりつけて上から引っ張り上げるのが良いか、麻袋に詰めて荷物として上に引っ張りあげるのが良いかを脅し…いや、説得して初めて自ら梯子をしぶしぶ登ってくれたのである。


 地下の足場を組む資材を運ぶ為利用していた荷馬車に、騎士団員とラファエレを乗せる。

 馬車の中で、司書官が書き写した途中までのルーン文字を真剣に読み込んでいる見習い魔術師を確認する。

 完全にルーン文字に魅入られている。


 アールが声をかけても返事がないのでそのまま出発させ、騎士団長とタスクも森へ向かう。


 アールとしては一応ギルドメンバーにラファエレを紹介しておくべきかも考えていたが、早くルーン文字の解読に取り掛かりたそうにしていたし、日が暮れてしまうと動き難くなる可能性もあるし次善策をとった。


 ミクスチュア広場は森とそう離れていないのだが。


――――――――――


 先刻前から森林付近は、男達の掛け声で盛り上がっていた。


 馬で近付くアール達の目には、簡易式の鎧を纏ったいかつい男達が、サットンと話をしているように見える。

 話し合っていると言うより、怒鳴り合っているように見受けられ、周囲を取り囲む男達が野次を飛ばしているようにも見えた。


 近づくと今正に、サットンに攻撃が行かないように騎士達がサットンの後ろについて、2グループに別れて揉めているとハッキリ見てとれた。


「一体何事だ!」


 早がけして2グループの間に来たアールは、馬から降りることなくわざと大きな声を出した。

 そのすぐ後でタスクが到着する。


「ああ?!何だてめえは!とりあえず馬から降りろ!!」

と野次と共に怒鳴るいかつい男達を無視し、アールの姿をすぐ捉えたサットンは号令をかけた。


「全員整列!」


 アールのすぐ後ろに騎士達が駆け足で並び、ラストにサットンが馬上のアールの傍に控える。


「クルセウス騎士団アール=レビンソン総長の到着である!」


 いかつい男達はざわめいて馬上のアールを見上げた。

 アールは黙したまま、簡易式の鎧を纏った男達を端からゆっくり一瞥する。

 威圧する事で騒ぎは一応中断したと確認しつつ彼等を観察する。


 各々の特徴ある武器を持つ体格の良い男達が20人程と、腰元に武器を携えた女性が数人並んでいる。

 抜刀はしていないが、いつでも戦えるように大勢が整っている様子だ。


 恐らく彼等がギルドの精鋭部隊だろうと辺りをつけつつ、アールはゆっくり時間をかけて馬から降り立った。

 そして殺気立つ空気の中、あえて間を作りながら言葉を繰り出す。

「今、紹介に預かったクルセウス騎士団総長のアール=レビンソンだ。君達は、ギルドから来た冒険者だとお見受けするが?」


「その通りだ。到着後すぐウチの斥候が森林内に偵察に行こうとした所をそいつ達が止めやがった。こちらとしても事情を把握する為に必要な行動だと説明しているのにおエライ騎士様方はダメだの一点張りだ。俺達の協力はいらねえって訳か?!」


 ギルド側の一番体格の良い赤毛の男が、代表のつもりで一歩前に出て牙を向く。


 アールはギルドの傭兵達に視線を送ると、様々な感情の色は見て取れるもののほぼ全員頷いたのを確認した。

 それからすぐサットンを一瞥して声をかける。

「報告を。」

 サットンは一礼すると、事と次第を説明し始めた。


 緊急招集の支持を受けた傭兵達は、森林に到着するなり彼等の斥候を偵察させると言い出したので、騎士団員が止めたのだと言う。

 しかし彼等は仕事は迅速にをモットーとしており、騎士団員達から話を聞かせて貰い、かつ偵察隊との話を合致させる事で事件のあらましを把握するつもりなのだと言う。


 いくらでかいとは言え、モンスターたった一匹にこれだけの警戒体制を準備する騎士隊を舐めている部分もあった。

 そういった雰囲気は騎士達にも伝わり、辛うじて表情には出さないものの剣呑な空気が漂う。


 一旦クルセウス領屋敷に帰還していたサットンは、その報告を受け急いで森林に向かったらしい。

 アールは既に広場に出立した後だったので、すぐ使いを出したが結局入れ違いになったそうだ。


 サットンが森林に到着すると既に斥候が森林に入った後だった。


 舌打ちしたサットンは、ギルド職員から正確に説明を受けていないのかと代表の男に話しを聞こうとしたが、既に空気が悪い中サットンが一歩前に出るだけで、傭兵達は殺気立ったのだと言う。


「朝みたいにアームレスリングで決着つけりゃ良かったのに。」


 タスクが嘆息しつつ、冗談とも取れるような言葉を発したが、アールはいつもの相手をしなかった。

 一触即発の彼等を見て、これがギルドの精鋭部隊かと呆れてもいた。


「話は大体把握した。所で先の国境戦の際にいた傭兵はいるか?」

 せめて冷静に話ができるよう、去年共に戦った傭兵がいないか語りかけてみる。

 少なくとも共に戦った戦友となら、もう少し落ち着いて話が出来る筈だと思っての言動である。

 代表の男は、俺じゃ話にならんと言うのかと声を荒げたが、それを遮る声が代表者の背後から聞こえた。


「私がそうだ。」

 灰色の簡易式鎧を身につけ、マントを肩に引っ掛けた体の線が細い男性か女性か判別し難い者が片手を挙げて前に出る。

 すらりと背が高く、騎士団の鎧を纏わせれば、よく似合いそうだ。

「クラウディア=ハサウェイだ。先の戦争では世話になった。」

 栗色の髪は肩よりやや短く、中性的な美しい顔立ちと、低いとも高いとも言えない声が性別を判別し難くしている。


「我々は落ち着いて話がしたいだけだ。彼は何故あんなに怒っている?」

「さあ…階級社会に一石を投じたいんじゃないのか?それとすまないが、私はリーダーに選ばれなかったので彼等に意見できない立場なんだが。」

「それは薄情だろう。何とか落ち着かせてくれないと話にならない。」

「…何とかねえ?」

 クラウディアは考える仕草をし、ギルドの代表者に視線を移す。


「おいクラウディア!そいつは何を話していたんだ?!」

 代表者が怒りに満ちた表情で、クラウディアに近付く。


 するとクラウディアは、代表者の男へ微笑むと、アールへ親指を差して回答する。


「この男前が、今夜一杯付き合わないかと。」

活動報告で記載させて頂きましたが、週末お休みします。

次回は月曜か火曜に更新する予定です。

宜しければ次回も読んで頂けると嬉しいです。

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