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面接
「俺が知ってる魔術師は、たった一人なのに無茶です。」
突然子供の俺に面接官やれってか。と言う、タスクの訴えにジュードはなるほどと考慮する。
「一人知っていれば十分と思うが?まぁ今回採用するかは私が決めるが、ギルドには魔術師の数がある程度揃うまで派遣の継続を依頼している。明日以降はお前が見極めて、アールに教えてやれ。最終判断はアールに任せる。」
「最終的に何人まで採用して宜しいので?」
アールの質問に、タィンヒル王国の印が押された書状を広げて見せた。
何か色々書いてはいるが、ようはギルドに要請する魔術師の数は2人までならOKですよという文面と、文面のラストに国王印が施されている。
ただこの書類の作成年月日は7年前。
国境付近で小競り合いが起きた際、この人数までの魔術師で対応に当たれと言う指示書だとアールはすぐ解った。
つまり、今回の異常事態もこの書類を名目に魔術師を雇うつもりらしい。
「2人だからな、よく検討して採用しろよ。それと先程の話を蒸し返すが、私は明日王都へ赴く理由の一つに、魔術師を10人雇用したいとおねだりして来るつもりだ。」
「ねだって許可下さいますかね?」
「緊急事態だからな、頼むだけ頼むしか無い。事件のあらましも何処まで存じて頂いているか解らんし、下手に邪推される前に直接ご報告に向かう事にしたのだ。陛下は心配性だからな。」
基本的に身分の高い者が魔術師を抱え込む行為は、禁止では無いにせよかなり厳しく規制されている。
はっきり理由を言えば、反乱分子を避ける為だ。
魔術師を制する者が、戦争結果を左右する。と、どこの国の王様達も考究する昨今、王族では無く、辺境の領主様が突然魔術師を何人も抱え込み出したら、謀反の一つも疑いたくなるのが定石である。
「ましてや私は7年前に左遷された身の上だからな。」
さらっと降格処分を受けたと告白したジュードに、アールが眉間に皺を寄せる。
「ジュード様。」
「隠す話でも無い。ただ事件解決に向けて、その事が足を引っ張っていないとは言い切れない。それが何故なのか先に話しておいただけだ。」
淡々と話すジュードに、アールはやり切れないため息を吐く。
簡単に言えばこうだ。
タィンヒル王国には年の離れた王子が2人いた。
当然長男が皇太子として育てられていたのだが、元々確執ある右大臣と左大臣が、皇太子派と第2王子派に別れ、どちらが皇位継承に相応しいかと意味の無い論争を始めてしまった。
結局皇太子が事故死した事で、第2王子の即位が決まったが、皇太子に着いていた右大臣達は、無論失脚。
左遷までは免れたものの、右大臣の発言権は無くなり、右大臣の当時の部下や貴族達は千々に飛ばされる。
ジュードも第2王子の即位が決まった年から、クルセウス家の領地を新たに与えられ管理を任されるようになったのが、この国境沿いにある領土だった。
以来この周辺をクルセウス領と呼んでいるが、王都では体の良い左遷だと噂されている。
だから簡単に魔術師の許可は降りないし、そもそもモンスターの事件自体スルーされる恐れがある事をジュードは淡々と告げたのである。
余り聞きたくない話だったので、早々に切り上げて貰う為、タスクが淡々と口を挟む。
「大人の話は解らん。要は実力派魔術師を採用する手伝いをすれば良いんだろう?」
「ご協力感謝する。」
ジュードは全く問題ない解釈だと頷いた。
ギルドの対応に関するすり合わせを終える頃、書斎のドアにノックの音が響き、執事が魔術師一行を入室させる為にドアへ向かった。
この領土に来てから何度もギルドに世話になったが、彼等の業務形態は噂でしか聞いた事がない。
基本的にギルド派遣協会への登録はかなり自由がきくとか。
登録料、入会料、更新料、及び身分証も不要である為、お手軽かつお気楽に登録できる。
出生が王族であれ、凶悪犯罪者であれ、百姓であれ、身分の差及び、老若男女の規制もない。
又、魔術師として申請するもよし、剣士として申請するも、料理人として申請するも、トレジャーハンターとして申請するも自由である。
最初は誰もが自称で登録し、向いていればそのまま継続してやって行ける、かなりいい加減な制度だとジュードの耳には入っていた。
ただ請け負った仕事に結果を出すことのみ彼らの評判を上げ、失敗すれば評価が下がって、次からは良い仕事が貰えなくなるシビアな世界でもある。
登録時の初心者を一々管理しないのがギルドのやり方だ。
ただ誰であろうと仕事をこなした登録者に報酬を支払う。それだけである。
その反面、能力の高い魔術師や戦士達は、ギルド上層部の管理下で優遇されている。
大きな戦争や何かの事件などの特殊な依頼に、ある程度応えられる体制を整えるのもギルド派遣協会の役割なので、ずさんな管理であるのはあくまでギルド登録時のみの話と言う事になる。
ジュードのような領主クラスであったり、事件や依頼の大きさ次第では、組合が直接管理下におく能力ある人間を派遣する事も可能なのだ。
だから、そうろくでもない…いや、名ばかりの魔術師が派遣される事もない。
無いのだが、午前中に注文して午後に到着は早すぎるとジュードは思う。
出前は迅速に行うべきだが、この周辺は、国境沿いの辺境で、言わば田舎だ。
辺鄙な土地に、短時間で精鋭魔術師を常に用意出来るとも思えない。
口元に手をあてたまま考え事をしているジュードを他所に、数名の客が入室した。




