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第22話 その技術は失われし古代遺産(なんのこっちゃ)

王都の冒険者ギルドへと向かう道中。


A級冒険者のエレナは、フードを目深にかぶったまま、隣を歩く俺に向かって、地を這うような低い声で呟いた。


「クロス。あなた、朝方にサラッと言っていたけれど……あの『マヨネーズの土手』で卵を閉じ込めるという悪魔の調理法。あれを『らぴ◯た』と呼んでいたわね?」


「え? ああ、はい。そうですが……それが何か?」


「やっぱりそうだわ……っ!」


エレナはガタッと肩を震わせ、周囲を警戒するようにキョロキョロと見回した。


「もしやそれは、私が幼い頃に読ん歴史書に書かれた伝説の島!」


「いいえ。異界の調理法です」


「伝説の天空の浮遊島!」


「おいこら」


「古代の超高度魔導文明によって作られ、一撃で大陸を灰にするという失われた遺産!」


「それ以上言うな。なんだかいけない気がする」


「まさか……あなたの組織はすでにその技術レシピすら掌握しているというの……!?」


「エレナさん、深読みしすぎ。ただのパンの呼び名ですよ」


「フン、そうやって世界の平穏のためにトボケるつもりね。いいわ、その口の固さ、組織の幹部として信頼に値するわ!」


完全に一蓮托生(共犯者)のつもりでいるな、こいつ。



ギルドの重い大扉を開けると、中はいまだに、ここ数日のオーロラ現象の噂でもちきりだった。


「おい、聞いたか? 魔導省の専門家が、あの紅白の光を分析したらしい」


「ああ、通常の100倍以上の『聖属性魔力』と、なぜか『脂肪分』のエネルギーが検出されたって大騒ぎだ」


(魔導省の分析能力、無駄に高すぎない!?)


ギルドの酒場では、高ランクの冒険者たちが深刻な顔で議論を交わしている。


その中心にいるギルドマスターが、俺とエレナの姿を見つけるなり、ドカドカと歩み寄ってきた。


「おお、エレナ! それにクロス! ちょうどいいところに来た。お前たち、昨夜のあの『めでたい紅白の光』が上がった民間区の近くで、何か不審な動きを見なかったか?」


ギルマスの鋭い眼光が俺に突き刺さる。


俺が冷や汗を流しながら言い訳を考えていると、隣のエレナが完璧なポーカーフェイスで一歩前に出た。


「マスター。その件でしたら私から報告があります。昨夜、民間区を調査していたのですが……あれは、魔王軍の残党による『広範囲精神汚染テロ』の予兆です」


「……何だと!?」


ギルマスが目を見開く。俺も目を見開いた。おいエレナ、何て大嘘をブチかましてるんだ。


「魔族どもは、王都の住民の精神を狂わせるため、謎の『生クリームの幻影』を街全体に放射したのです。私とクロスは、その精神攻撃を食い止めるため、一晩中、地下で必死の防衛魔術(ただの買い食いアリバイ)を展開していました。おかげで住民たちの腰痛が治るなどの微細なバグが出ましたが、テロの本体は完全に我が組織……いえ、我々が阻止しました!」


エレナは胸を張り、凛とした声で堂々と宣言した。


A級冒険者としての圧倒的な信頼度があるため、ギルドマスターは「む、無理もない……エレナとお前がそこまで言うなら、そういうことにしておこう……」と、完全に丸め込まれてしまった。


え、今の信じるの?



「さすがはエレナだ。よし、魔族のテロを未然に防いだ功績として、お前たち二人には特別報酬を出す。クロス、お前もA級の背中を見て、しっかり学ぶんだぞ」


「は、はい。ありがとうございます……」


なんという完璧な情報操作。


エレナのおかげで、ラステアの「デブ活オーロラ」は、すべて『魔族のテロを阻止した英雄的行為』として処理されてしまった。


ギルドを出た後、路地裏でエレナはフッ、と得意げに髪をかき上げた。


「どう? クロス。私の機転のおかげで、あなたの『計画』はギルドの上層部から完全に隠蔽されたわ。……これで、私の監視能力の高さが証明されたかしら?」


「ええ……本当に助かりましたよ(色んな意味で)」


「ふん、感謝するなら、今夜の『組織の作戦会議(晩ごはん)』は、もっと凄いものを期待しているわよ? 聖女様ばかりに美味しい思いをさせるのは不公平だからね」


ツンとすました顔をしながらも、その琥珀色の瞳は「今夜は何が食べられるのか」という期待でキラキラと輝いている。


隠密料理人として世界を操る(と勘違いされている)俺と、秘密結社(ただの食いしん坊の集まり)のメンバーとなったエレナ。


今夜もまた、ボロアパート『ひだまり荘』で、ジャージ姿の聖女様が胃袋を空っぽにして俺たちの帰りを待っている。


次は、このA級女騎士の脳をさらにバグらせる、どんなジャンクフードを投下してやろうか。

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― 新着の感想 ―
ギルマスはチョロいw 聖女様は人間の食べ物は何でもご馳走だろうけど、エレナを満足させ続けるのは少し大変ではないのかな?
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