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第14話 やっぱり我が家が一番。だけど、まぁ、発言には気をつけないと

「……はぁ、疲れた。マジで疲れた……」


深夜。王都の最安値エリアにある木造アパート『ひだまり荘』の我が家。


俺はレンタル衣装の堅苦しい礼服を速攻で脱ぎ捨て、いつもの着古したシャツとズボンに着替えてた。そしたら万年床の上へダーイブ。


胸元には、王宮からもらった『凱旋勲章』の金メダルが転がっている。


王宮の晩餐会はめちゃくちゃになった。


あの後、ハゲ頭からフサフサの髪の毛が生えて男泣きする公爵たちと、突然生えてきた世界樹の大樹の分家みたいなのの調査で大パニック。


俺はそのどさくさに紛れて逃げるように帰ってきた。あんなグダッた空間なんかにいてられるかっ。


「まぁ、何はともあれ、無事に帰ってこれて良かったわ……」


天井のシミを見つめながら一息ついた、その時。


──トントントントン!


いつもより激しく、かつリズミカルにベランダの窓が叩かれた。


「はいはい、今開けますよ」


誰が来たのかなんて、見なくともわかる。


カーテンを開けると、ほら、やっぱり。


そこには、王宮の馬車からテレポートで直接脱走してきたんだろうな。


緑色ジャージ姿のラステアが立っていた。


頭のティアラや純白のドレスはどこへやら、前髪をいつものヒヨコのヘアピンで雑に留め、よれよれのジャージに身を包んでいる。


完全なる実家モードの聖女様である。


「クロスぅぅぅ! 窓開けて! 早くコーラ! 炭酸強めのやつ!」


窓を開けた瞬間、ラステアは床にダイブするように滑り込んできた。そのままベッドの枕に顔を埋めて、ゴロゴロと悶えている。


「ふぁぁぁ……! これだよこれ! この狭さと、ちょっとカビ臭い木造の安心感! やっぱり『ひだまり荘』は最高だね! 王宮のあの、広すぎて落ち着かないベッドなんていらない!」


「一応、国家の国賓なんだから王宮のスイートルームに泊まってくださいよ。……ほら、キンキンに冷えたコーラです」


国家予算レベルの永久冷却の魔導具(今や炭酸保冷庫になっちゃった)から取り出したコーラを差し出すと、ラステアは起き上がり、プハァッと勢いよく喉を鳴らした。


「生き、返る……!」


「大袈裟ですねぇ」


「いやいや。ドレスなんて着るもんじゃないよ。お腹は締め付けられるし、歩くたびにエルフの長老が『聖女としての歩幅が――』ってうるさいし」


「聖女だから仕方ありませんね」


「やっぱりジャージでこうして足を広げて座るのが一番だよ」


ズボンを穿いているとはいえ、実にお行儀悪くベッドの上であぐらをかくラステア。


外では世界を滅ぼせるレベルの『氷の聖女』が、この部屋の中だけで見せる、完全なズボラ姿。


王宮でドレス姿の彼女を見た時は少し遠い存在に思えたけれど、こうしてコーラを美味そうに飲む姿を見ると、やっぱり俺の隣人はコイツだな、と妙な安心感が湧いてくる。


「……そういえばラステア。王宮の公爵たちの髪の毛、フサフサになってましたよ。あれ、あなたのてりマヨパワー(魔力暴走)のせいですからね」


「え? そうなの? じゃあ今度から、あのおじいちゃんたちに会う時は、私のドレスの袖にてりマヨ仕込んでおかなきゃ」


「物理的なテロになるから絶対にやめてください」


「えへへー──ん?」


 俺の近くに転がっていたギルドプレートが、月明かりに反射してキラリと光った。


「クロス、それ新しいプレート?」


ラステアがコーラを片手に首を傾げる。


「ああ、王宮の晩餐会から帰る途中、ギルドマスターに呼び出されてたんですよ。『聖女を護り、王宮に奇跡をもたらした英雄』ってことで、特例で『B級冒険者』への階級が決まったらしいですね」


「なんで他人事……? でもまぁすごいじゃんクロス! 出世頭だね!」


ラステアは長い耳をぴこぴこと嬉しそうに揺らしているが、俺はめちゃくちゃ頭が痛い。


「全然嬉しくないし、断りますよ」


「え⁉︎ なんで?」


「なんでって……C級を断ったのと同じ理由です」


「自分の実力じゃないって?」


「です」


「頭が硬いなぁ……。永久バフなんだから、これから死ぬまでクロスは私のバフを受け続けるんだし、そんなに深く考えなくて良いと思うんだけどなぁ」


「これは男のプライドの問題です。女の……それも聖女の力を借りて成り上がるんだなんて、みっともないじゃないですか」


「別にみっともなくないよ。私の永久バフが受けられるのも、クロスの料理のおかげなんだし、それって実質、クロスの実力じゃん」


「料理を作って剣の腕が上がるとか、なんか違いません?」


「てか、永久バフなんだし、クロスの実力は元には戻らないんだよ? 戻すなら私を殺すしかないけど……殺す?」


 普通の会話をしていたはずなのに、いきなりそんな会話になるなんて。


 殺す? 俺がラステアを?


「そんなこと、できるはずないじゃないですか」


「だよね。永久バフをみすみす捨てるなんて出来ないよね」


「違います‼︎」


 力がこもった否定に、ラステアを目をぱちくりとさせた。


 こちらもいきなり怒鳴ったもんだから、少し申し訳ない気持ちになるが、今はそんなことよりも強く否定しなければならない。


「ずっと隣にいて欲しい人を殺すなんて、できるはずないでしょうがっ‼︎」


「クロス……それって……?」


 俺は勢いに任せてなんちゅうこと言ってんだ。


「そ、それに……B級になんかになったら、回ってくる依頼がドラゴン退治とか国家間紛争の調停とか、ヤバい案件ばっかりになるんですよ」


 面舵一杯で話をズラすと、ラステアも顔を逸らしながら俺の面舵に付いて来てくれる。


「だ、大丈夫だよ。も、もし強い魔獣が出てきたら、私がまた美味しいものいっぱい食べて、クロスに特大のバフをあげるから」


「や、だから、そうじゃなくて……」


「あ、したは、明日はハンバーグが良い! 中からチーズがトロ〜ッて出てくるやつ! そ、それじゃあ!」


ラステアは、自分の要求を伝えると、逃げるようにベランダから出て行った。


確かに、今のは俺の暴投が過ぎた発言だったよな。


「……しかしラステア。本当にカロリーの暴力しか要求しないな」

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― 新着の感想 ―
消費したカロリーはどこに行くんでしょうねえ。やっぱり神聖力として垂れ流す? どれだけ食べても負、太らない、万人が望む体なのかw
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