23 制海の宝玉
「貴様・・・エドモンド・・・!どこから、いや、何をしに来た!」
「分かりきったことを聞くな。」
全員がローランド卿に気を取られている隙に、竜がスペイン兵の手から箱を奪った。箱は地面に落ち、ふたが開いて、中身が出た。ローランド卿の足元に、青い光を放つ石が転がった。ちょうど、掌に収まるくらいだ。ローランド卿はそれを見下した。そして、呟いた。
「こんなものか・・・。」
「こんなもの、だと?エドモンド、それが何か分かっているのか?」
ローランド卿は黙ったままだ。カニバーリェス卿は続けた。
「制海の宝玉、マリアネ。それを手にすれば、この世の七つの海を統べることができるという。貴様らに奪われた過去の栄光を、再びこの手に収める。制海権を手に入れる、真の王者は誰であるかを思い知るといい。」
そして、部下に合図を出し、戦闘態勢を取らせた。銃口を、何のためらいも無く、ローランド卿に向けさせた。
「さあ、命が惜しくば、それをこちらに寄越せ。」
だが、ローランド卿は剣を抜いた。
「戦うつもりか?」
カニバーリェス卿の問いを無視して、剣を振り上げ、一気に降ろした。
カシャーン、という音と共に、宝玉は砕け散った。割れてなお、その欠片は光を放っている。
「貴様ーっ、なんということを!」
カニバーリェス卿が叫んだ。憎しみに顔が歪んでいる。ローランド卿は冷たい視線を投げかけた。
その声がまだ響く中、竜が再びスペイン軍に向かって行った。ローランド卿は慌ててよけた。スペイン兵が叫び声を上げて戦っている。竜に踏まれ、角で切り裂かれる。竜の黄緑の鱗は、たちまち赤くなっていった。イギリス兵は、為す術もなく、ただじっと見ている。
五十人程いたスペイン兵は、あっという間に数が減った。突然、いくつか銃の乾いた音がして、竜の鱗と翼に穴があいた。クー、と竜が悲しそうな声をあげ、ウィリアムを見た。ウィリアムはイギリス軍の陰にいたが、兵の制止を振り切って走り出た。
「セルヴァンテス!」




