22 氾濫する影
光が強くなってきた。足音と、話声も聞こえる。扉から、カニバーリェス卿の一行が帰って来た。手には青い光を放つ石が入った箱が握られている。だが、笑い合っていた人々が、怪物の姿を見ると、急に静かになった。
「ウィリアム・・・か・・・?」
カニバーリェス卿が、手に持っていた箱を隠すようにして後、呟いた。だが、ウィリアムが岩陰に腰を抜かしているのと、セルヴァンテスの体がないことに気付いた。
「セルヴァンテスか?」
カニバーリェス卿は一歩前に出た。部下の制止を無視している。
「竜になってまで、そんなに大事か?」
ウィリアムはびっくりした。あれが、竜?
竜は首をかしげ、クーと鳴くと、スペイン兵の方に歩きだした。スペイン兵が、一斉に後ずさった。竜は歩みを止めない。
突然、竜は暴れ始めた。スペイン兵はどよめき、態勢が崩れた。竜は、カニバーリェス卿だけを狙った。
「この化け物め!」
カニバーリェス卿は剣を抜くと、斬りかかったが、鱗に弾きかえされた。
「おのれっ。」
カニバーリェス卿は空に箱を放り投げた。部下がそれを受けとり、出口へ走って行った。竜はそれを追って走り、兵士の頭上を飛び越え、出口に立ち塞がった。
ウィリアムは自分の肩に、誰かの手が置かれるのが感じられた。悲鳴を上げそうになったが、こらえた。暗くてよく見えない。スペイン兵の松明のわずかな明かりで、エドモンド・ローランド卿だと分かった。彼の後ろにイギリス兵がいる。別の洞窟からもつながっている道があったようだ。
ローランド卿はウィリアムを兵士に任せると、一人で、ゆっくり歩いて出て行った。




