表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/26

21 想光

 ウィリアムは、セルヴァンテスの方に這って行った。

「セルヴァンテス・・・。」

 名前を呼んで屈みこんでも、反応は無かった。目を閉じたまま、微笑みかけてもくれない。

「うそ・・・。」

 ウィリアムは涙を流した。涙が一しずく、セルヴァンテスの胸の傷に落ちた。すると、傷がふさがり始めた。ウィリアムは驚いて、セルヴァンテスから離れた。嬉しいのか、怖いのか分からない。ただ、じっと見ていた。胸の傷がふさがった。セルヴァンテスの目から涙がこぼれた。

「セルヴァンテス!」

 生きている!ウィリアムが近寄った。だが、様子がおかしい。

「セルヴァンテス・・・?」

 顔に、黄緑の鱗が浮かび上がるのが見えた。慌てて手に視線を落とすと、セルヴァンテスの指はなく、代わりに黒曜石のような漆黒の蹄があった。明るい茶色だった癖っ毛は、黄金色に変わっていった。手にも鱗が出てきた。ウィリアムは悲鳴を上げて後ずさった。左目が熱い。セルヴァンテスの額からは、ルビーのような角が生えてきた。

 それはもうセルヴァンテスではなかった。翼も生え、黄緑の鱗に覆われた怪物。目を開けた。セルヴァンテスの瞳は優しい鳶色だったが、瞳は黄金色、それ以外は黒の目をしていた。四つの力強い足で立ち、翼をはためかせた。飛ぶことはできないのか、それとも飛ぶつもりがなかっただけなのか。翼はゆっくり畳まれた。顎の髭と尾も黄金色で、特に尾は馬のような立派なものだった。

「あ・・・。」

 ウィリアムは恐怖に立てなくなった。体が震えている。だが、怪物はウィリアムには興味がないようだった。光の漏れる扉を、じっと見つめている。その姿は、ウィリアムに背を向けて、まるで守っているかのようだった。


サブタイトル「想光」なんて言葉はありません、多分。創語です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ