第62話 狩竜人と言う生き方
「真正面に立たなければそれほど脅威では無い、身体も硬いからとにかく回り込め」
レイから的確な指示が飛んだ、初めて対峙した竜だろうと瞬時に脅威と弱点を見抜く、そして、その判断を間違えずに迅速に行う。
それが出来なければ最前線で竜狩りなど出来ない、そして俺達はその指示通りに動く手足のような存在、言われた事を言われた通りに行う事が求められる。
翼が無いから空も飛べない、両の手は短く可動範囲も狭い為に攻撃に向かない、2足歩行の為に素早く方向転換が出来ず、直線的にしか飛び掛かる事が出来ない、両の眼が顔の左右に付いている為に視野は広いと思われるが、尻尾を持たないため視野が広くても後方への攻撃手段が乏しい。
後頭部と思われるところを切り裂き、頭部を左右に割って確実に息の根を止めた後、ヤマクライを解体しながらレイが語り始めた。
「それでも、こいつらが仲間のどこを喰ったら大きくなるのか分からなかった、それが分からないと町のヤマクライの討伐に支障が出てしまう」
「やっぱり心臓とか、脳とかなんじゃ無いですかね。もしかしたら、それ用の部位が有るかもしれないですけど」
レイの解体の手伝いをしていたフランシスが答える、共食いで大きくなったヤマクライの口の中で俺を見ていた死んだ瞳を思い出し、特徴的な目玉が鍵なのかもと思ったが、もし間違っていたらと思うと、とてもじゃ無いが迂闊な事は言えないと口を噤んだ、
「町のヤマクライも共食いを始めているかも知れん、ゆっくり準備している暇は無いから、このまま強襲するが、みんな覚悟は良いか」
この場合の覚悟とは戦いに向かう覚悟では無い、今日これから数時間後には死んでしまうかもしれない覚悟、謎に包まれたヤマクライと言う竜の、隠された生態をひとつひとつ解明していくための犠牲。
死に物狂いで初めての竜を狩り、故郷へ寄港してもすぐに船を乗り換えて狩りに向かう、俺は家族にも友達にもただいまの一言も言えなかった。




