第63話 港町上陸
再び港町に戻ったが、変わらずに人気の無い不気味な雰囲気が漂っている。
最初に見た時と違うのは、すでに生存者は望み薄な上に、そこかしこにヤマクライが潜んでいて、いつ襲われて喰われるのか分からない状況に置かれている事も合わせて、その静けさにより恐怖感を抱いてしまう。
そこかしこに沈んでいる様に、この船が沈められたら俺達の負け、共食いを許して俺達の手に負えないような強大なヤマクライになってしまっても負け、とにかく俺達は途轍もなく不利な状況で、運良くヤマクライを狩ったとしても助けるべき住人も居ない不毛な狩りだ。
何も無い海から船にヤマクライが侵入して来たので、侵入経路を断定できたから比較的簡単に狩る事が出来たが、町の中では隠れる場所も沢山有る上に、鈍く銀色に光る体表は滑りけを帯びており、小さな両手で狭い隙間の中でも動き回れると推測されるために狩りは困難を極めるだろう。
「船には誰も残して置けないから、船員は俺達と一緒に行動して貰う。食料が残っているとヤマクライが襲ってくるかも知れないから、魔力炉は止めて保冷している食料はすべて破棄する。何日の狩りになるか分からないが、3日くらいなら食わなくても平気だろ、お前ら」
レイの言葉に俺を含めた狩竜人は誰も賛同しなかった、確かに3日くらいなら絶食も出来るが、それはあくまでも狩りが終わるまでの希望日であって確定日では無い。
思っていたのと違う反応に少し戸惑いを見せたレイだったが、俺達の顔色を窺って小さくため息を吐いて、
「この狩りが終わったらアトモスで豪遊だ、費用は俺が全部持つ、とにかく飯が美味い街だ、それ以外はあまり期待するなよ」
右手を突き上げながらレイが高々と宣言すると、その言葉を待っていたのかの様に狩竜人たちも右手を突き上げてレイを称えた。
故郷へ帰るだけの俺にはそれほど楽しい事とは思えなかったが、これからの狩りの困難さを忘れるために奇声を上げている様に見えて、周りに合わせて同じように叫ぶ気にならなかった。
船は速度を上げて港町に突入した、みるみる桟橋が近付いて来る、とても止まる事は出来ない、危ないぶつかる、そう思っていたが勢いよくぶつけるためだったようだ。
加速した狩竜人船はべきべきと木製の桟橋を薙ぎ払って、桟橋のさらに奥へ奥へと進んで行き、減速もそこそこに轟音と共に接舷と言うよりも座礁させた。
「誰でも良いから生き残って、この事を後世に遺せよ」
レイの号令の元、いつ終わるかわからないヤマクライ討伐戦が始まった。
生きて帰りたい、誰もがそう思っている、歴史に名を残す一握りの狩竜人達の仲間入りが出来るか、それならば死んでも本望、それが狩竜人という生き方。
でも俺は、出来るのならば生き残る最後の一人に成りたい・・・。




